競馬にもっと熱気のあった頃

2012年02月09日(木) 12:00

 閉塞感が出てくると、強い者への待望論が出てくると、一般的には言われるが、これを競馬の世界に引用してみたくなった。

 強豪、スターの出現をいつも待ち望んでいるのが我々の思いであることに、昔も今も変わりない。そして今は、三冠馬でグランプリホースがいる。この四冠馬が閉塞感を打破してくれるかどうか。

 あの三冠達成の京都、新旧交代の図をはっきり描いた中山。それにしては、かつての熱気が感じられただろうか。いや、十分に感動したと言う者もいるが、それは、競馬を知って日の浅い者に多く、以前からのファンなら近ごろの状況は少し違うと感じているのではないか。

 ブームというのは集団催眠のようなものには違いないが、熟してきたならそれなりの姿を見せてもいい。多くの者が参加する競馬になっているのなら、競馬を観賞するという面が、もっと出てきていいのでないか。

 そうは言っても、ターフの上では立派な主役がいる。ただ、そのスターの存在をただの現象としてだけしか捉えていないのではないか。実像は、かつてのブームの頂点に立ったスターと変わりはないのに、どこか我々の捉え方が違ってきている、つまり競馬の見方が変質していると、少し目を凝らしてみるべきだと思えてならない。

 物事の捉え方は、多くは日頃の習慣によるところが大きい。あの競馬にもっと熱気のあった頃の、身の回りを思い出してみる必要があるのではないか。

 困難が生じたら過去から勉強する。どの世界でも、伝統を大切にするところでは、すべてが過去からの一本の糸でつながっている。そして、目の前の事に大きく動揺することなく、問題を悩みにかえないで、問題は問題として解決するキッチリした姿勢がそこにはある。今こそ、寒さに耐えたものにある凛とした強さを取り戻したい、競馬にも。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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