心を込めるということ

2012年02月16日(木) 12:00 7

 心を込めるとは、話す言葉だけでなく書く言葉についても言える。簡単に言葉を探しもとめていると、この心が字面(じづら)に追いつかないまま勝手に流れているように思えてしまうのだ。そう、キーボードで楽に言葉を打っているときがそんな状況に思える。心を置き去りにして言葉が安く流通しているような。そこには、実感も薄れる心地ばかりが残っていく。

 競馬に寄せる思いがどんなであるか、自分にとって懐かしいカセットテープがひょっこり出てきた。キーボードのない時のものだ。

 日本中央競馬会創立30周年を記念して制作したもので、「名勝負・中央競馬30年」という題で、今から28年前のもの。当時の内村良英理事長の競馬に寄せる思いを聞いたインタビューも入っていた。次から次へと名馬の名勝負が流れてきて、胸に迫るものがあった。構成、原稿に精魂こめたその頃の自分が思い出されたのだが、その冒頭の言葉は、当時の馬や競馬に抱いた精一杯の思いを述べたもので、こんな散文である。

 ーー何かが始まる、遥か見渡す遠いざわめき、いままた胸騒ぎとともに自由な道が迎えてくれる。生き抜く力、耐え抜く力を、これまで目の前を駈け抜けて行った幾万のサラブレッド達は、私たち人間に示してきた。邪気がないではないか、健気ではないか、いとしいではないか、サラブレッドに抱いてきたこの思いは、或いは、そのまま私たち人間に対する心からの思いであったのかもしれない。

 時代が少しずつ変質しているのか、いまは競馬や馬に対する思いが見えてこなくなった。石原慎太郎氏は、社会が衰弱してきたから日本人全体の自我が衰弱してきたと述べている。そうであるならば、取り戻さなくてはならない。その第一歩に、心を込めるということがあり、身近な競馬や馬から始めるのもひとつの考え方なのかもしれない。

長岡一也氏イベント

長岡一也氏のイベントが2/24(金)開催

 2月24日(金)18時から、東京・新橋にある「Gate.J」にて、近代競馬150周年記念イベントの第一弾として、競馬キャスター・長岡一也氏をゲストに迎えた「近代競馬150周年記念1 実況放送の歴史」が開催されます。

 競馬の実況はいつどうやって始まったのか?、神様・大川慶次郎さんが解説者に抜擢された秘密は?など、アナウンサーとして実に半世紀のキャリアを誇る長岡氏だからこそ語ることの出来る内容が盛りだくさんです。是非、ご来場ください。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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