2011年度BTC利用馬成績

2012年02月29日(水) 18:00

 連日厳しい寒さが続く日高だが、BTCでは2歳馬の調教が鋭意進められている。今やこの施設を抜きにしては語れないほど、我が国の競馬において重要な位置を占める存在となったBTC。年が明けた先月には昨年度のBTC利用馬の競走成績がまとめられており、公表されている。

 それによれば、昨年度の年間利用延べ頭数は18万83頭。一昨年から見ると0.7%の増加となった。月別では以下のようになっている。

1月14,550頭 2月15,896頭 3月18,762頭 4月17,611頭
5月17,052頭 6月15,825頭 7月15,354頭 8月15,625頭
9月12,583頭 10月10,766頭 11月12,552頭 12月13,487頭

長い歴史を持つ武田ステーブル

長い歴史を持つ武田ステーブル

 毎年、1月になってから徐々に増え始め、3月にピークを迎えるのは2歳馬の調教がこの時期にかけて佳境に入るためである。4月から5月には、仕上がりの早い2歳馬がトレセンに移動し早期デビューに備えるため、利用馬が少しずつ減少して行く。ただし、6月に中央の新馬戦が始まってからもしばらくは多くの2歳馬がこの周辺の育成牧場に残っている。

 いよいよその数が一気に少なくなるのは9月から10月にかけてのこと。利用頭数が最も少ない10月は、いわゆる端境期で、育成牧場にまだ残っている2歳馬と新しく入ってきた1歳馬とがこのころから混在し始める。11月から12月にかけては、その比率が逆転し、2歳馬が転出する分だけ新たに1歳馬がどんどん入厩してくるというサイクルになって年が変わる。

 現在、BTCに騎乗したまま入場できる周辺の育成牧場には、合計865馬房が稼働していると言われる。もちろんこれらすべてに育成馬が入っているわけではないとは思うが、ざっと見渡した印象では、ほとんど“満杯”に近いのではなかろうか。

 乗ったまま調教に通えるメリットは大きく、馬運車での移動組と比較すればかなり効率がいい。近年、不況のせいでサラブレッドの生産頭数が漸減し続けている中にあって、この周辺だけは依然として活気を失っていない。

ヒルノダムールを育成したグランデファーム

ヒルノダムールを育成したグランデファーム

 さて、昨年度の中央と地方の競走成績だが、まず数字を挙げておく。

 中央競馬では746勝、うち2歳戦は113勝である。勝鞍総数では前年比+11勝。2歳戦では-2勝であった。また地方競馬では、2583勝で前年比+33勝。2歳戦に限定すると88勝で前年比-24勝となっている。

 BTC利用馬の多くは中央デビュー馬と思われるが、競走成績では地方競馬の勝鞍が断然中央を上回る。その理由はいったいどんなところにあるのか。

「つまり、BTC利用馬という定義に原因があります。現在、ここではデータを取る際に利用馬を『1日だけ利用してもカウントする』という方式を採用しているので、一度でもここの施設で調教したことのある馬はすべて利用馬と見なします」とのこと。

 中央入りする前にここで調教された2歳馬がデビューし、成績が頭打ちになった時点で地方に転出するケースはかなり多い。概して地方競馬では高齢まで現役を続ける例が少なくないので、その結果、地方競馬での勝鞍数が2583勝という結果となるのである。

 1歳から2歳にかけてここでじっくりと乗り込まれ、デビューに至るのがおそらく本来の姿だとは思うが、1日でも1年でも同じくくりになってしまう。これは果たして同列に扱っていいのかどうかという気がするものの、しかし現時点では利用馬の“線引き”はこれ以外にないのかも知れない。

 ところで今年は、夏の北海道開催が昨年よりもかなり削減される。それが利用馬の動向にどんな影響を及ぼすのかがやや気になるところだ。それともうひとつは、生産頭数が減少傾向にあること。個人馬主が日高の生産馬を買い求め、BTC周辺の育成牧場で調教して中央入りさせるという従来の流れが、今後少しずつ変化して行く可能性がある。

 少なくとも利用頭数では、たぶん今がピークであろう。今後は送り出した2歳馬たちがそれぞれどういう成績を挙げてくれるかにかかっている。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

新着コラム

コラムを探す