見応えあるケンタッキーダービー戦線

2012年03月07日(水) 12:00

 優勝馬には薔薇の肩がけが贈られることから「Run for Roses=ラン・フォー・ローセズ」と呼ばれるアメリカのケンタッキーダービー戦線も、本番(5月5日)まで2カ月を切るところまで進んで来た。

 ここ数年、有力と目された馬が故障で離脱したり、前哨戦の段階であっさり敗退したりで、主役の定まらぬまま本番を迎える年が続いていたこの路線。一時は「今年も混戦か?!」と見られた時期があったが、ここへきて有力馬が期待通りの結果を残す競馬が続き、久しぶりに上位陣の層が厚い3歳戦線が展開されている。

 3月2日から5日にかけて発売された、ケンタッキーダーダービーのフューチャー・ウェイジャー・プール2(第2回期間限定前売り)で、オッズ5.0倍で個別の馬としては1番人気に推されたのが、ユニオンラッグス(牡3、父ディキシーユニオン)だ。昨年のファシグティプトン・フロリダセールにて39万ドルで購買された後、M・マッツ厩舎の一員として7月12日にデビュー。楽勝続きの3連勝でG1シャンパンS(d8F)を制したが、1番人気に推されたG1BCジュヴェナイル(d8.5F)でハンセンに頭差敗れて連勝がストップし、2歳チャンピオンのタイトルも獲り逃すことになった。

 ユニオンラッグスの3歳初戦となったのが、2月26日にガルフストリームパークで行われたG2フォンテンオヴユースS(d8.5F)だった。ダービー戦線で主役を張れる馬なのか、あるいは、仕上がりの早さを利して3連勝を飾った早熟タイプなのか、この馬にとってリトマス試験紙となったこのレースを、ユニオンラッグスは4馬身差で快勝。ダービー戦線の軸と目されることになった。同馬の次走は、3月31日にガルフストリームで行われるG1フロリダダービー(d9F)の予定。

 そのユニオンラッグスと対峙する存在なのが、昨年の2歳チャンピオン・ハンセン(牡3、父タピット)である。ケンドール・ハンセン氏の自家生産馬で、M・メイカー厩舎の所属馬となったハンセンは、9月9日にターフウェイパークのメイドン(AW5.5F)でデビュー。ここを12.1/4馬身差で圧勝した後、9月24日に同じくターフウェイパークで行われたケンタッキーCジュヴェナイル(AW8.5F)に駒を進め、ここも13.1/4馬身差で圧勝。その勝ちっぷりに意を強くした陣営が、次走に選択したのがチャーチルダウンズのG1BCジュヴェナイル(d8.5F)で、重賞初挑戦にしてダート初体験となったここも頭差の辛勝ながら勝利を飾り、北米2歳チャンピオンのタイトルを手中にした。

 ところが、3歳初戦となったガルフストリームのG3ホーリーブルS(d8F)で2着に敗れ、連勝がストップ。怪物の化けの皮が剥がされたと、いきなり評価を下げることになったが、次走、3月3日にアケダクトで行われたG3ゴーサムS(d8.5F)を3馬身差で快勝し、ダービー戦線の有力候補に返り咲くことになった。次走は、3月24日にターフウェイパークで行われるG2スパイラルS(AW9F)か、4月7日にアケダクトで行われるG1ウッドメモリアルS(d9F)の予定。

 この両巨頭を追いかける存在になっているのが、もともと素質を高く評価され、3歳になって重賞初制覇を果たすことになった、エルパドリーノ(牡3、父プルピット)とアルファ(牡3、父バーナーディーニ)の2頭だ。

 東海岸のトップトレーナー、T・プレチャーが管理するエルパドリーノは、昨年8月にサラトガでデビュー。初戦は2着に敗れたものの、2戦目となったベルモントパークのメイドン(d8F)で初勝利を挙げると、次走は東海岸における出世レースと言われるG2レムゼンS(d9F)に挑戦。僅差の3着に好走して、2歳シーズンを終えた。年明け、初戦となったガルフストリームの条件戦(d8.5F)で2勝目を挙げると、次走は2月25日にフェアグラウンズで行われたG2リズンスターS(d8.5F)に挑み、レースレコードに0.16秒差に迫る好時計で駆け抜けて、待望の重賞初制覇を果たした。次走は4月1日にフェアグラウンズで行われるG2ルイジアナダービー(d9F)の予定。

 ダーレーが生産したゴドルフィン所有馬アルファを管理するのは、K・マクラフリンだ。昨年9月にサラトガのメイドン(d7F)でデビュー。ここを6馬身差で快勝すると、次走はG1シャンパンS(d8F)に挑み、ユニオンラッグスの2着に好走。続くG1BCジュヴェナイル(d8.5F)こそ11着に大敗したものの、今季初戦となった1月7日にアケダクトで行われたカウントフリートS(d8F70y)を快勝。続いて2月4日にアケダクトで行われたG3ウィザースS(d8.5F)に挑み、3.1/4馬身差で制して重賞初制覇を果たした。次走は、4月7日にアケダクトで行われるG1ウッドメモリアルS(d9F)の予定。

 現時点では重賞未勝利ながら、一部の関係者やファンが高く評価しているのが、西海岸のトップトレーナー、B・バファートが管理するフェドビズ(牡3、父ジャイアンツコーズウェイ)だ。叔父にG1ミドルパークS勝ち馬ミナルディや、種牡馬テイルオヴザキャットがいるという血統背景を持つ同馬。デビュー2戦目となったサンタアニタのメイドン(d8F)で初勝利を上げた後、2月9日に同じくサンタアニタで行われた条件戦(d8F)に出走し、ここも5.3/4馬身差で制して2連勝。いよいよ重賞初挑戦となる、3月10日にサンタアニタで行われるサンフェリペS(d8.5F)が、この馬にとって試金石となるはずだ。

 実績馬・新興勢力ともに、魅力的な素材の揃っているのが今年の北米3歳世代で、久しぶりに見応えのあるダービー戦線となりそうである。

合田直弘氏イベント

「Uoooma Jockeys' Cafe」が3月20日開催

合田直弘氏が司会を務める競馬イベント「第1回 Uoooma Jockeys' Cafe」が3月20日(火・祝)11時より、東京都・港区の汐留シティセンターで開催されます。

同イベントでは、中央競馬の後藤浩輝騎手がプロデュースした料理、愛飲のスーパー栄養ドリンクが飲食できる他、競馬ゲーム「Champion Jockey」(PS3版)を使用したUoooma コーエーテクモ杯を開催。優勝者には、後藤騎手と同ゲームで対戦ができる権利とスペシャルな優勝レイ(GI仕様)が贈呈される。また、松永幹夫調教師もゲストとして出演する予定です。お誘い合わせのうえ、「ジョッキーをもっと身近に感じる」一日を体験してみてください。

▼ 合田直弘氏の最新情報は、合田直弘Official Blog『International Racegoers' Club』でも展開中です。是非、ご覧ください。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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