ばんえい競馬最高峰のレース・ばんえい記念

2012年03月24日(土) 12:00

 25日(日)、帯広競馬場で、重さ1トン(牝馬は980?)のソリを曳くばんえい競馬最高峰のレース・ばんえい記念が行われます。

 今年は、おととしの優勝馬ニシキダイジンと去年の勝ち馬カネサブラックの“2強対決”が、最大の見どころとなるはずでした。

 ところが、カネサブラックが体調不良により急きょ出走を回避。このレースを最後に引退するニシキダイジンとの最終決戦は“幻”となってしまいました。帯広のきゅう舎では、ここ数週間、競走馬の風邪が流行っているとのこと。先週も4、5歳馬の重賞・ポプラ賞で2頭が出走を取り消すなど、競走除外や出走取り消しが相次ぎました。その影響が、ばんえい競馬の最重要レースにも及んでしまったようです。

 こうなると、出走各馬が当日まで無事でいられるかどうか、心配でなりません。とはいえ、出走を決めた各馬が揃って出てくれば、それなりに見どころは満載されています。

 ニシキダイジンが引退の花道を飾れるかどうかはもちろんのこと。同馬に騎乗する鈴木恵介騎手には、ばんえい記念初制覇がかかっています。鈴木騎手は、08年度以降リーディング首位を守り続け、今シーズンは自分が持っていた年間最多勝記録を塗り替えた、押しも押されもせぬばんえいのナンバー1ジョッキーです。しかし、ばんえい記念のタイトルはまだ手にしたことがありません。なにしろこのレースは、中央で言えば日本ダービーと天皇賞をあわせたようなもの。鈴木騎手も何としてでも勝っておきたいと思っているはずです。

 鈴木騎手の義父・鈴木勝堤さんも、通算2000勝をマークしたばんえい競馬の名ジョッキーでした。でも、ばんえい記念(旧・農林大臣賞典)は、古くはアサギリ、引退間際にはミサキスーパーであわせて4度の2着がありながら、勝てませんでした。このレースを勝つことは、鈴木家の悲願かもしれません。

 また、07〜09年の同レースを3連覇したトモエパワーと、牝馬ながらたびたび牡馬を一蹴して重賞勝ちを収めてきたフクイズミも、今回が引退戦。カネサブラック不在と言えども、ここ数年のばんえい競馬で数多くの名勝負を繰り広げてきた名馬たちが一堂に会するのは、今回のばんえい記念が最後となるわけです。これは必見でしょう。

 そしてもうひとつ。長年にわたってばんえい競馬の場内実況を努めてきた井馬博さんが、今月限りで引退するそうです。“喋り納め”は翌26日になりますが、井馬さんの実況を聞きながら見られるばんえい記念も今回が最後。おそらく渾身の実況を聞かせてくれると思います。

 例年、勝ち馬と最下位の馬がゴールするときに拍手が沸き起こるばんえい記念ですが、今年は引退する名馬や井馬さんにも拍手を贈りましょう。競馬場に行けないのでテレビ観戦というみなさんも、どうかよろしく!

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矢野吉彦

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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