2012年03月29日(木) 12:00
芝居を見たり、旅に出たり、野球を観戦したり、美術館や博物館に行ったり、さらにはサッカーや相撲を応援したり、それからコンサートも入るし他にもあるが、こうした後に物として残らないものに価値を見い出すことを、江戸前なら粋(いき)と言う。
粋とは野暮でないこと、生きている時間を買うことで得られる楽しい日常につながっている。この仲間たちに競馬も入っているし、そうあってほしいとずっと願ってきた。
競馬を満喫するとは、競馬場にいてそこでの時間をどう過ごすかで、結果として見聞を広め友達を増やすことになれば大成功だ。ただひとり馬券を買うだけでもいいが、仲間ができて語り合えた方が楽しい。そこにだけできる人の輪、話題も興に乗ればふくらむし、仲間意識が強まり、人のつながりが豊かになっていく。競馬場のいいところは、見聞を広めて友達を増やせる場所だということで、そこから互いに助け合うこころが生まれてくる。そんな競馬仲間が元気に談笑する光景が、競馬場のそこここで見られる。
その昔、庶民が元気だった江戸時代は、江戸前の粋が輝いている時代でもあった。その一生を江戸の風俗を題材にした漫画や文筆で活躍された杉浦日向子さんによる江戸の話は面白い。富くじが人気を呼びブームになったとき、長屋の人達は高額すぎると知恵を出した。ひとつの富くじを数名が頭割りで買う割り札というやり方を考えだしたのだ。今で言うところのグループ買いだ。この考え方は競馬にも通じるが、ウイン5でこれをやっているものがいると聞く。富くじは初期のころは一枚一分(ぶ)だったが、文化文政期に入りもう少し安くと、半額の二朱(しゅ)にしたそうだが、ウイン5も単位を半分にしてほしいという声がある。そして、競馬場の中でも買えるようにすれば、粋な遊びとしての競馬が味わえ、生きている時間をもっと楽しく買っているという実感が強くなるのだが。
バックナンバーを見る
このコラムをお気に入り登録する
お気に入り登録済み
お気に入りコラム登録完了
長岡一也「競馬白書」をお気に入り登録しました。
戻る
※コラム公開をいち早くお知らせします。※マイページ、メール、プッシュに対応。
長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。