本能を正解に導くこと

2012年04月26日(木) 12:00 6

 やたらにものがたまり、部屋がせまくなってうっとうしい。捨ててしまえばいいのに、その決心がつかない。いつ何かの役に立つかもしれない。だから、もうちょっとそのままにしておこうと。かくて、それほど重要とも思われない古い雑誌や書類などがあとからあとから出てくる始末。この整理下手はどう仕様もない。

 よし、いちいち吟味などせず、思い切り整理してさっぱりさせようと心を決める。手当たり次第、屑箱に入れていく。どれもこれもくだらないもののように見えてくる。調子に乗って捨てていく。ちょっと浮足立っているかなと頭をかすめる。これはとっておかなくてはと、大事にしていたノートを思い出す。捨ててしまっていくら探しても出てこない。頭の中パニックになる。やはり、慎重にしなくてはいけないのだ。心を鎮めて時間をかけるべきなのだ。ひとつひとつゆっくりと。

 何を残すべきか。とっさの判断を下すようにしなければ。結局、そこに行きつく。残すべきか、切り捨てるべきか。保存するも整理するも、いずれも本能みたいなもの。本能なら、そのときの気分に従えばいい。

 出馬表の馬名を眺めて取捨選択するのもこれと同じだ。あれこれ検討しすぎると、目に見えない頭の中が散らかしっぱなしになって整理がつかない。がらくたの山の中にいるようなもの。これでは知識の活用は覚束無い。

 さてどうするか。残すか、捨てるか、どう突き詰めたところで回答は得られない。とり合えず、自分の本能に従って、残したいと思ったら残しておいて、無理に絞り込むことはしない。整理するのは、しばらく時が経ってからにするのだ。大家は、作品を書いてしばらくしてから推敲すると言うではないか。ひとまず休む。夜考えたことをあくる朝に見直す。これがいい。大切なのは、本能を正解に導くこと。それには明るく振る舞って福を招き、即断することか。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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