2012年05月10日(木) 12:00
どう受け継ぎ、伝えていくか。様々な分野で語られてきた。生活のきまりごと、言葉遣い、食事の作法など知らず知らずのうちに習慣として身につくものはある。だが、つないでおかなければ途切れてしまうものもある。
伝統文化などは、受け継ぎ伝えることの大切さに目を向けなければ消えていく類だ。
競馬は、血統の伝承継承という側面を強く持っているので、語り継ぐ楽しさがあり、その点、伝統文化を守るには、いつも競馬の王道を行く取り組みをしていればいい。名マイラー、ダイワメジャーの産駒がNHKマイルカップを勝つ、それはそれで語り継ぐ意味があって楽しい。だが、それだけでは競馬を文化として語るにはもの足りない。近代競馬発祥からずっと受け継がれてきたものがあり、そこには作法があり、習慣があり、言葉にだって伝統に裏打ちされたものがあり、それらを統合して競馬なのだから、どう受け継ぐかで、文化としての味わい方が異なる筈だ。できるだけ多くを語り合うことから始め、正しく私どもの競馬を伝える一人になりたい。
物事、繰り返すことで習慣が生まれ、やがてその行為を意識しなくなっていくものだが、その点、競馬は少し異なる側面がある。長くやり続けていくうちに、ある種の心境が生まれるのだ。そうしたものの中には立派な生き抜く哲学が内蔵されているから面白い。結果にとらわれてはいけないと自らに言い聞かせ、もっと心を養わなければと思うようになっていく。
心を養う妨げになっているものに、競馬は打って付けの場面を作ってくれる。怒り、公開、嫉妬、傲慢などなど。レースが終って自分がどうなっているか、少しの変化でもつかんでいれば、修行の第一歩を踏み出せたと言っていい。繰り返し続けることで得られる心境。それを語り合うことで、貴重で上等な財産を得、そこから生まれるゆとりが、伝統文化に目を向かせてくれる筈だ。
バックナンバーを見る
このコラムをお気に入り登録する
お気に入り登録済み
お気に入りコラム登録完了
長岡一也「競馬白書」をお気に入り登録しました。
戻る
※コラム公開をいち早くお知らせします。※マイページ、メール、プッシュに対応。
長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。