ダービー馬のその後と岩田騎手の“いい人”秘話

2012年05月31日(木) 18:00

 先週の日本ダービー優勝直後、「NHKマイルで騎乗停止になったあと、岩田騎手は土日も含めてディープブリランテの調教につきっきりで参加した」という記事が流れました。この情報によって岩田騎手ってすごく熱心な人なんだな、と思われた方も多いと思います。しかし、岩田騎手がさらにすごいのは、「これだけ熱心になること」が当たり前なところなんですよ。

岩田騎手、念願のダービー制覇

岩田騎手、念願のダービー制覇

 普段でも、岩田騎手が朝の調教が始まる1、2時間前から厩舎のスタッフより早く厩舎に現れるのは決して珍しくありません。そんなに早くきてなにをしているかというと…。

 たとえば、騎乗停止のためにレースに乗ることは叶いませんでしたが、ヴィクトリアマイル前、乗る予定だったマルセリーナに毎日ブラシをかけてピカピカに磨いていました。馬房にチップを足して愛馬がフカフカのチップの上で寝られるように気を配るだけでなく、時間が余れば自ら厩舎スタッフの控室である大仲を掃除したりもしています。

 まったくもって、一流騎手がやらなくていいこと、なんですが岩田騎手は自らそんな雑事を買って出ます。騎手の中には調教にあまり参加しない方も少なくないのですが、岩田騎手は交流競走で川崎や大井のナイターに騎乗した翌朝の調教だって、当たり前のように居ます。

 以前、そんな岩田騎手に冗談半分本気半分で「どれだけ、頑張るんですか!?」と聞いたことがあります。でも、そんな愚問に岩田騎手は「頑張れるだけ頑張るねん!」と明るい笑顔を見せていました。それだけ頑張ることが、岩田騎手にとっては当たり前のことなんです。

 ほかにも、NHKマイルで落馬させてしまったシゲルスダチの関係者にもレース後すぐに謝罪の電話を入れていたり、騎乗が決まった馬の顔を毎朝見に行ったりと気配りもすごい。これだけ高いモチベーションと気配りを維持する人は、そうそういないと思います。そんなバックグラウンドがあるだけに、優勝後に晴れてダービー馬となったディープブリランテの鞍上で号泣する岩田騎手の姿にはわたしももらい泣きしてしまった、という次第です。

ディープブリランテ

ダービー馬・ディープブリランテ

 その一方で、岩田騎手がどれだけ泣いても、観客がどれだけ大歓声をあげても、ひじょうに落ち着いているディープブリランテ自身にもひじょうに感激しました。

 レース後の火曜日、厩舎に様子をうかがいにいくと、ひじょうに落ち着いた様子でカイバをモリモリと食べていました。担当の貝沢厩務員によれば「さすがにこれまでのレースの中で一番疲れていた」そうですが、それでも食が落ちないのはなによりです。

 今年の春先までは人気を背負っていたこともあり他のマークも厳しかった。でも、ダービーではしっかりと脚をためて最後の直線に賭けることができた。「レース直後、岩田騎手は『これがやりたかったんだ』と言いながら上がってきました」(貝沢厩務員)というように、他馬に左右されないで自分の競馬に徹することができてよかったですね。

 その後、30日水曜日にノーザンファームしがらきへ放牧に出ました。

ブリランテ

ブリランテはまだまだ成長途上

 この写真はやや上からとっているのでわかりにくいかもしれませんが、いまのディープブリランテの体はキ甲に比べて腰のほうがやや高いのです。

「まだ成長途上の体つきなので、厩舎に戻ってくるころにはキ甲が抜け、やや背が伸びているでしょうね」(貝沢厩務員)

 ゆっくり休んだあと、実際にどこまで成長するのでしょう。その姿を見る日が待ち遠しいです。

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花岡貴子

デジタルレシピ研究家。パソコン教師→競馬評論家に転身→IT業界にも復帰。競馬予想は卒業したが、現在も栗東トレセンでニュースやコラム中心の取材を続けている。“ねぇさん”と呼ばれる世話焼きが高じ、AFPを取得しお金の相談も受ける毎日。公式ブログ「ねぇブロ」(http://ameblo.jp/takako-hanaoka/)

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