鳴尾記念

2012年06月01日(金) 18:00

 GI競走と異なり、ふつうの重賞レースは競走体系の改革によってコースや距離が変更されるのは珍しくない。だが、この伝統の「鳴尾記念」、ひょっとすると数ある重賞レースの中で、もっともさまざまな変更を受け入れた競走の代表格ではないかと思える。

 ストックブックをみると、創設期から6月と12月を行ったり来たりしていたが、やがて春の3月になり、別定戦がハンデ戦になったり、距離は4回も変わり、格付け当初はGIIランクだったものが、GIIIに格下げになるなど、ことごとくの変化を受け入れた。

 今年から、4月の「大阪杯」と同じ阪神の内回り2000mで行われる。大阪杯と別定の斤量規定も同じだが、条件再編成の直後なので3歳以上となった。大阪杯が天皇賞・春のステップレースなら、こちらは3週後のGI「宝塚記念」の前哨戦になる。

 季節は明らかに夏に移っている。ここをステップに宝塚記念はムリのないローテーションのように映るが、この時期の調整は思われるほどたやすくないかもしれない。もともとトップのオープン馬は夏に2戦もしない。

 ◎は5歳トゥザグローリー(父キングカメハメハ)。夏場は、3歳時のラジオNIKKEI賞が人気で5着。4歳時の昨年は天皇賞・春のあと体調一歩で凡走しているように、夏馬ではない。この馬、当然ここをステップに宝塚記念を展望するが、夏場に向かい、このあとさらに体調アップはない危険が大きい気がする。

 もともとムラな面があって、全成績[7-2-2-8]。極端にいうと、勝つか凡走かに分かれるところがある。ドバイ遠征を予定していた今春、多少とも余裕残しの仕上げだったとはいえ、58.5kgを背負って楽勝した日経新春杯あとの中山記念では、信じがたい凡走に終わり、ドバイ遠征が中止になった。

 凡走のあとだけに今回の仕上げはとりわけ入念。今回が完調に近いと判断した。日経新春杯、日経賞、京都記念。GII重賞を3つも制しているこの馬の別定57kgは他との比較で有利だろう。明らかに体調の良くなかった昨年の宝塚記念を別にすれば、阪神コースは3戦3勝。典型的な中距離タイプと思えるので、[1-1-0-1]の距離2000mもベストに近いはずである。次走より今回こそが狙いだろう。

 相手本線は、同じ条件の大阪杯で驚異的な直線大外一気をきめてみせたショウナンマイティ(父マンハッタンカフェ)。宝塚記念に直行とみえたが、安田記念(除外)か、ここをステップに選んできた。あの戦法は、少しタイムのかかることが多い宝塚記念にはドンピシャだが、開催変わりの速い時計(速い上がり)のレースでは届かない危険も考えたい。

 良馬場で56kgの2000mなら、前3戦を離れて評価を上げたいのがトーセンラー(父ディープインパクト)。おそらく岩田騎手に合う。今回はデキもいい。

 再び調子上向きのアーネストリー(本当の狙いは宝塚記念か)、自在性を身につけてきたスマートギア、さらにパワーアップしてきたナカヤマナイトの3頭を連の押さえとしたい。

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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