2012年06月14日(木) 12:00
年齢を重ねていくうちに到達するひとつの境地、言葉では簡単に言い切れても、実際にはこの心はぐらぐらしている。競馬も人生と同じで、なかなかひとつに定まらない。頑(かたくな)に自分のスタイルを守っている知り合いはいるが、とても達観するところまではいっていない。
磨き抜いた銀の美しさ、今ではこれに憧れている。
先月、プロ野球でひとつの大記録が生まれ、心に響く素敵な言葉が残された。2千本安打を達成したヤクルトの宮本慎也選手はベテランの41歳、過去にこの記録を達成した人達とくらべてホームランが最少なのに犠打は最多だった。その宮本選手は、「脇役の一流にはなれたなかなと思う」と述べていた。いぶし銀の魅力に溢れている。
普通考えると、脇役に一流はないと思うのだが、そうではないことを宮本選手は見せつけてくれた。そこには、自分に定められたポジションはしっかり守ってきたという自負がのぞいていたように思える。
自分に、この自負できるものがあるのだろうか。これまでの生きてきた道すじの中で、これだけはと守り続けているものはと、問うてみた。関わりの一番多い競馬では、例えばステイゴールドのような馬が好きだ。シルバーメダリスト、いぶし銀、その少し前は、ナイスネイチャが気になって仕方なかった。その時代を代表する絶対的スターはスターとして、その影を追う立場に自分を置き換える癖があった。もしかしたら、いぶし銀にずっと憧れていたのかもしれない。それを宮本選手の言葉が気づかせてくれた。
ぐらぐらしてきたこの心が、もしかしたらそのひと言でしっかりしていくだろうか。どう競馬に接してきたかが手がかりになり、どう競馬に接していくかが見えてくる。「脇役の一流にはなれたかなと思う」の言葉が、例え自分のものにならなくともそれでいい。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。