第16回北海道スプリントカップ

2012年06月20日(水) 18:00

 6月14日(木)。今年度の道営ホッカイドウ競馬では初の交流重賞となる「第16回北海道スプリントカップ」(D1200m)が行われた。

 この日の門別はやや低めの気温ながらよく晴れており、中央からダービージョッキーである岩田康誠騎手を始め、普段ここではお目にかかれない人馬が来場するとあって、なかなかの賑わいであった。

 このレースは1997年より中央と地方の短距離交流重賞として、この初夏の時期に門別で実施されており、以前の優勝馬の中には現種牡馬のビーマイナカヤマ、サウスヴィグラス、ノボジャックなどもいる。

 今年は13頭がエントリーしてきた。タイセイレジェンド、トウショウカズン、セレスハント、サマーウインドの4頭が中央から、そして、ダイワエンパイア(金沢)、ナイキハイグレード(高知)、ブリーズフレイバー(大井)、ガルホーム(佐賀)の4頭地方競馬他地区から、それぞれここに集まった。

 地元の道営勢からは、アーバンストリート、グレンチェック、ギンゲイ、プリティゴールド、ロクイチスマイルの5頭が参戦した。

 人気はやはり中央所属馬に集まった。前走「さきたま杯」(浦和D1400m、交流重賞)で3着、その前の栗東ステークス(京都D1400m、オープン特別)で2着と好調のトウショウカズンが1番人気に支持され、2か月の休養を経て2度叩かれ徐々に調子を上げているタイセイレジェンドが2番人気。続いて、セレスハント、サマーウインドと続いた。

 発走は午後8時ちょうど。第11レースに組まれていた。2コーナーポケットからのスタートで、13頭が一斉にゲートを飛び出す。まず先手を奪ったのは、13番サマーウインドである。藤岡佑介騎手の騎乗するサマーウインドは59キロと実績上位のためにメンバー中最も重い斤量ながら、果敢に先行する。

セレスハント

岩田騎手のセレスハントがV

 それをグレンチェック、ガルホームなどが追う展開で、タイセイレジェンドとロクイチスマイルも食い下がる。しかし、その後ろにつけていた岩田康誠騎手騎乗のセレスハントが4コーナーを回ると内側から一気にまとめてこれらを交わし、独走態勢に入った。

 結局、抜け出したセレスハントがタイセイレジェンドの追撃を抑え、1分11秒6のタイムでゴールイン。2馬身2分の1差でタイセイレジェンド(内田博幸騎手)が2着。1番人気のトウショウカズン(川田将雅騎手)はそこから1馬身2分の1差の3着に敗れた。また、実績上位のサマーウインドは4分の3馬身差の4着で、59キロがやはり堪えたのかもしれない。

 地方所属馬最先着はプリティゴールド(五十嵐冬樹騎手)。また、4月25日の道営開幕日に行われた「北斗盃」(道営三冠の第一弾)を制したロクイチスマイルが3歳馬ながら「北海優駿」を回避してこのレースに挑戦したものの、7着に終わった。

セレスハント

セレスハント関係者口取り

 過去16回の同レースを振り返ると、圧倒的に中央所属馬が強く、2001年以来これで中央勢が12年連続で勝利を収めている。

 勝ったセレスハントは、父コロナドズクエスト、母エリモシンフォニー(その父Blushing Groom)という血統の牡5歳馬。栗東・松永幹夫厩舎所属。馬主は岡浩二氏。生産はえりも町の(有)エクセルマネジメント。

 終わってみれば、日本ダービー優勝騎手(セレスハント)と調教師(矢作芳人厩舎=タイセイレジェンド)の組み合わせで決まったことになる。

松永幹夫調教師

サインに応じる松永調教師

 さすがに日本ダービーを勝ったばかりとあって、岩田康誠騎手の人気は高く、パドックやウイナーズサークルにはいつもよりもずっと多くのファンが「出待ち」をする光景が見られた。また今もなお松永幹夫調教師も人気があり、表彰式後にはサインを求められて快く応じる姿が印象的であった。

 それにしても、1着賞金2200万円、総賞金3300万円のうち、実に3190万円(96.67%)が中央勢に攫われていったことになる。これも競馬である以上、やむを得ない結果なのは百も承知だが、道営ファンとしてはいささかやり切れないところであろう。

 目の前に高額賞金がぶら下がっていながら、上位全てを中央勢に独占されてしまう現実には何とも言葉を失ってしまう。入厩馬の質や調教方法など、地方と中央との格差を改めて感じさせられた一戦であった。

 なお、この日の門別は、前日(13日)よりも入場人員が倍以上に増えて1086人が来場。2憶4493万6100円を売り上げた。これは今年度開催中、最多の売り上げで、知名度の高い中央競馬の人気騎手と実績馬が遠征してくるだけで注目度がこれだけ増すことをまざまざと見せつけられた思いである。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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