欧州2歳重賞でニューアプローチ産駒が活躍中

2012年06月27日(水) 12:00

 欧州はすでに、続々と2歳重賞が行なわれる季節を迎えている。

 2歳戦線がすでにかなり進行しているということは、じょじょにではあるが、答えが出始めているのが、新種牡馬を巡る評価だ。今年初年度産駒がデビューを迎えた新種牡馬の中で、抜群のスタートダッシュを決め、現時点で極めて高い評価を得ているのが、ニューアプローチである。

 6月19日にロイヤルアスコットを舞台に行なわれた、北半球最初の2歳馬重賞G2コヴェントリーS(6F)を、産駒のドーンアプローチ(牡2、父ニューアプローチ)が制覇。続いて同じくロイヤルアスコットを舞台に22日に行なわれた牝馬重賞G3オルバニーS(6F)を、産駒のニューファングルド(牝2、父ニューアプローチ)が優勝。更に23日のロイヤルアスコット最終日に組まれた距離7Fの準重賞チェシェイムSを、産駒のサイール(牡2、父ニューアプローチ)が制したのである。

 ロイヤルアスコットがはじまった段階で、ニューアプローチが送り出していた勝ち馬の数は3頭だった。すなわち、3頭の勝ち馬が揃って、重賞もしくは準重賞の勝ち馬になったのだから、欧州生産界が騒然とするのも無理はない。

 牝馬ながらG1愛チャンピオンSを制し、愛国の3歳牝馬チャンピオンとなったパークエクスプレス(父アホヌーラ)が、22歳の時に産んだ仔がニューアプローチだ。パークエクスプレスは繁殖牝馬としても優秀で、ニューアプローチの兄には、日本で走りG1高松宮記念などを制した後、豪州で種牡馬として成功したシンコウフォレスト(父グリーンデザート)がいるし、姉には、母の制したG1愛チャンピオンSに挑んで2着となったダズリングパークがいる。

 2006年のゴフスミリオンセールに上場されたニューアプローチは、43万ユーロで調教師のジム・ボルジャー師に購買され、ボルジャー夫人と知人のパートナーシップの所有馬としてデビューすることになった。管理したのは言うまでもなく、ボルジャー師である。

 初出走は2歳7月15日で、カラのメイドン(7F)でデビュー勝ちを飾ると、トントン拍子で5連勝。G1デューハーストS、G1ナショナルSという2つのG1を制した同馬は、欧州2歳チャンピオンの座に輝いている。

 すなわち、仕上がり早でスピードがあったのが現役時代のニューアプローチで、父のこうした形質を忠実に受け継ぐ仔が多ければ、早いうちからの活躍が見込めるはずというのが、今季のスタート前の予測であった。

 3頭の勝ち馬の1頭、コヴェントリーSを制したドーンアプローチの初出走は、開幕直後の3月25日だった。カラのメイドン(5F)でデビュー勝ちした同馬は、続いて5月26日にナースで行われた条件戦(6F)に登場し、ここも白星で通過。6月4日にナースで行われたLRロチェスタウンS(6F)も勝って臨んだのがコヴェントリーSで、すなわちデビューから4連勝で重賞制覇を果たしたのである。大手ブックメーカー各社は、来季の2000ギニーに向けた前売りで、同馬に9〜13倍のオッズを付け、1番人気に支持している。

 オルバニーSの勝ち馬ニューファングルドのデビューは、6月8日のニューマーケットで、距離6Fのメイドンを4.1/2馬身差で快勝。続いて駒を進めたのがオルバニーSで、すなわちニューファングルドもドーンアプローチ同様、デビューから無敗の連勝で重賞制覇を果たしたわけだ。そしてニューファングルドもまた、来年の1000ギニーへ向けた前売りで、ブックメーカー各社が7〜11倍のオッズを掲げ、1番人気に推す存在となっている。

 そして、チェシェイムSの勝ち馬サイールは、5月20日にリポンのメイドン(6F)でデビュー。ここは4着と敗れたものの、6月6日に同じくリポンで行われたメイドン(6F)を4馬身半差で制して初勝利を飾ると、返す刀でチェシェイムSに出走してここも連勝。大手ブックメーカーが17〜21倍のオッズを掲げ、2000ギニーの前売り2〜3番人気に推すことになった。

 これだけでも相当にインパクトのある成績だが、新種牡馬ニューアプローチが大きな話題となっているのは、現役時代の同馬が単なる2歳チャンピオンに留まった馬ではなかったからだ。

 冬の間に所有権の売買がまとまり、所属厩舎は変わらぬまま、シェイク・モハメド夫人のプリンセス・ハヤの服色を背に走ったのが3歳時のニューアプローチだ。3歳時の同馬は、G1英ダービー、G1愛チャンピオンS、G1英チャンピオンSに優勝。スタミナも成長力もあることを、実証しているのである。

 ガリレオからサドラーズウェルズという、ニューアプローチのトップラインから継承される形質を受け継ぐ仔が多く生まれれば、産駒の主戦場は12F路線になるとの見方も出来たわけで、今後ゆっくりとデビューしてくる馬の中には、典型的クラシックタイプの仔も含まれているのではないか、との予測が生じている。そして、既に勝ち上がっている馬たちにも、成長力と距離の融通性があるのではないかとの期待があることが、来年のクラシックを巡るアンティポスト市場における評価にもつながっているのだ。

 いずれにしても、今後のニューアプローチ産駒は、競馬場でもせり市場でも、目の離せない存在となりそうである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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