社台グループ1歳馬募集ツアー

2012年06月27日(水) 18:00

 気温が上昇している本州とはうって変わって、北海道の6月はまだ寒い。そんな中、各クラブ法人ではこの時期に1歳の募集馬ツアーを行うのが恒例である。

 6月9日(土)、10日(日)と16日(土)、17日(日)の2週にわたり、大御所の社台グループが社台サラブレッドクラブとサンデーサラブレッドクラブ(他に同系列のGIサラブレッドクラブも合同開催)の1歳募集馬展示会が行われた。

 私事ながら、会員になっている友人の配慮で、昨年よりこのツアーに参加させていただいている。そもそもがこの募集ツアー自体の人気が高いらしく、毎年この時期2回に分けて実施されているが、すぐに定員に達するほどで、キャンセル待ちも出る状態なのだという。

初夏の北海道、肌寒い気候

初夏の北海道、肌寒い気候

 16日(土)午前9時半。東京および関西方面から飛行機で到着した会員を待って、千歳空港内のANA到着ロビーに総勢500人を超えるツアー客が全員揃った。点呼を取り、バス13台に分乗して出発。目指すは千歳市東丘の社台ファームである。最初に用意されているのは野外バーベキュー形式の歓迎昼食会だ。

 雲の多い空模様で、風がやや冷たく感じられる気候だったが、雨の心配はない。牧場スタッフ総出で振舞われる牛ステーキやイカ焼き、じゃがバター、茹でアスパラ、とうきび、メロンなどで満腹した。

 この日は社台ファームと追分ファームの1歳馬牡牝を見学した。中央入厩予定のみならず、地方競馬デビュー予定馬もいる。また一般会員でシェア(40口)する1歳馬の他に、馬主資格を有する会員向けのオーナーズ(10口)の1歳馬も登場する。この日だけで計142頭もの見学になった。

 綺麗に刈り込まれた放牧地の中ほどに、楕円形の柵が設けられていて、その中を数頭の1歳馬が周回している。周囲には椅子が並べられ、会員たちは思い思いの場所に陣取り、じっと募集馬を“品定め”する。

馴致が行き届いている

馴致が行き届いている

 楕円形のコースの両側に出入り口があり、1頭出て行くと次の1頭が入ってきて、絶えず中では数頭の1歳馬が周回を続けている。1頭ずつ紹介するアナウンスがスピーカーから聞こえてくるが、どの馬も実に馴致が行き届き、暴れたり立ち上がったりする馬はいない。

 周回が終わった馬は、それぞれ所定の場所に移動し、比較展示となる。予め配布された予定表には、どの馬がどこで展示されているかが示されており、会員たちはそれぞれ目当ての馬のところに行って近くでじっくり眺める。持ち手のスタッフに馬の様子など聞いて、写真を撮り、どの馬を“持つ”かを考えるのである。

 募集馬のラインナップは、言うまでもなく圧倒的とも思える粒ぞろいであった。社台サラブレッドクラブの場合、関東と関西を合わせて79頭の募集で、1口の価格は35万円〜250万円。79頭中16頭が100万円を超えている。それでも仄聞(そくぶん)するところによれば「高い方から埋まって行く」のだそうで恐れ入る。

 昨今の競馬を見ていても、この募集馬の中から確実にGI級の大物が出てくるであろうことは間違いないわけで、人気馬になるとあっという間に満口になるのだという。

雨にも負けず、熱心に見学

雨にも負けず、熱心に見学

ジェンティルドンナの半弟

ジェンティルドンナの半弟

 バス13台を連ねてのツアー2日目はノーザンファームの展示会であった。あいにくの雨となったものの、募集馬のラインナップはさらにパワーアップしていた。

 この日は130頭が登場した。募集馬の中には、桜花賞、オークスを制したジェンティルドンナの半弟(父ゼンノロブロイ)も展示され、熱い視線が注がれていた。因みにこのドナブリーニの11は1口300万円。総額1億2000万円と高額だが、おそらくセールに上場されてもそのくらいにはなるだろう。ジェンティルドンナの全姉ドナウブルーも京都牝馬Sを制しており、ヴィクトリアマイル2着と活躍している。確実に走る血統とも言える。

 降りやまない雨の中、正午過ぎまで募集馬の展示会が行われ、その後ノーザンホースパーク内にて昼食となった。午後は社台スタリオンでの種牡馬展示会がオプションで行われ、解散は午後3時半。昨年は現役馬の見学も日程に組み込まれていたが、今年は1歳馬のみの展示。しかし、それでもこれだけ豪華なラインナップの1歳馬は、おそらくこのツアーを除いて他にはない。見ているだけで満腹感を味わった。

 来週、もう一度クラブ募集馬ツアーについて書く予定でいる。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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