続・1歳馬募集ツアー〜岡田総帥も登場〜

2012年07月04日(水) 18:00

 先週に引き続き、クラブ法人の1歳馬募集ツアーについて書く。

 6月23日(土)と24日(日)はウインレーシングクラブ、ラフィアンターフマンクラブのツアーが行われた。

 ウインレーシングクラブは昨年末に代表者が変更され、コスモビューファームが全面的にバックアップする体制となった。今年度の第1次募集馬は自家生産馬13頭、庭先取引馬13頭の計26頭のラインナップである。

コスモビューファームの展示

コスモビューファームの展示

 23日午後1時。太平洋を見下ろす高台にあるコスモビューファームには、バス8台に分乗したウインの会員たちが集まり、さっそく1頭ずつの「個体展示」が開始された。ウインレーシングクラブは1頭を400口または200口に分割して会員に提供される。1頭の募集価格は800万円〜3000万円。1口価格は32500円〜65000円とかなりリーズナブルである。

 番号順に登場する1歳馬を解説するのは岡田義広氏。“総帥”繁幸氏の三男で、クラブ法人の代表を務める。

 26頭中6頭が、初年度産駒となるコンデュイットだ。その他ステイゴールド、タニノギムレット、マツリダゴッホ、スクリーンヒーローなどが各2頭ずつのラインナップである。牡18頭に対し牝8頭と、かなり偏りがある。

 コンデュイットは周知の通り、総帥が輸入し一昨年より本邦で供用を開始した新進種牡馬で15戦7勝。BCターフ2連勝を含めGI4勝を挙げた実績馬だ。

「いずれはコンデュイット産駒でBCターフを制覇するのが夢」と義広氏も言うように、この種牡馬に寄せる期待はかなり大きい。ウインレーシングクラブがビッグレッドグループに加わったことにより、種牡馬ラインナップももちろん、1歳募集馬もより総帥色に染まったものになった。

 ウインレーシングクラブの展示会が終了後、会員はそのままバスで同じ新冠町明和にあるビッグレッドファーム本場まで移動した。

ビッグレッドファームの展示

ビッグレッドファームの展示

 岡田紘和氏が代表を務めるラフィアンの今年度の第1次募集馬は54頭。ここでも募集馬の中心はコンデュイット産駒である。その数19頭に及ぶ。また、ステイゴールド産駒も10頭に上る。いずれもグループが現在最も力を入れている種牡馬であり、その期待度がうかがえる。

 ラフィアンの場合、1頭を100口に分割しており、募集価格は800万円〜3600万円。したがって1口当たり8万円〜36万円となる。社台サラブレッドクラブやサンデーサラブレッドクラブと比較すると全体的に価格はもちろん割安だが、口数が少ない分ウインよりは単価が高めで、両方に跨る会員の懐具合に合わせて馬を選択できるようになっている。

 近年、クラブ馬主の系列化、グループ化が進み、セールスポイントをどこに置くか、なにを“売り”に募集するかをより明確に打ち出さなければならない時代になった。ウインもラフィアンも、それぞれ子息の代になっているとはいえ、依然として圧倒的な存在感を示しているのが岡田繁幸氏である。

 今回は個体展示の際にマイクを掴んで熱弁をふるう機会はなかったものの、翌24日(日)に、ビッグレッド真歌で行われた恒例の「公開調教」では、休憩時間を使っての総帥トークショーが始まった。

 現在の競馬の世界を概観し、コンデュイットにかける大きな期待や、この展示会の日に報じられたばかりのアイルハヴアナザー(本年度のアメリカ2冠馬)導入を巡るエピソードなどにも言及した。

岡田繁幸氏のカリスマが牽引力

岡田繁幸氏のカリスマが牽引力

「繁殖牝馬のレベルがまず社台グループとの一番大きな差だ。1億、2億の繁殖がゴロゴロいる社台と違って、日高にはそんなにいい繁殖牝馬はいない。ウチにいる一流の繁殖牝馬程度の馬は、社台には何百頭もいる。それくらいレベルが違う」と総帥は言い「そんな繁殖たちから生まれた産駒が成績を上げるのは当然のことで、こういう世界レベルの馬たちと競馬場で戦わなければならないのだから本当に大変なんです」と語るのであった。

 だが、こうしたハンデを背負いながらも、クラブは維持して行かなければならない。ウイン、ラフィアンの場合は、未だに岡田繁幸氏の存在、影響力がかなり大きくそれが実質的に両クラブのセールスポイントでもあるのだが、社台系、ビッグレッド系以外にもクラブ法人はたくさんあり、それぞれが知恵を絞って所属馬の成績向上と会員拡大に躍起になっている。

 クラブ毎に条件は異なるものの、この業界もまたかつてないサバイバル時代に突入しているとだけは間違いなさそうだ。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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