2012年07月17日(火) 18:00
今回は美浦から第2弾ですが、早々に番外編。日本競馬界のテッペンとも言うべきセレクトレールに潜入して来ました。今年は5年ぶりに売り上げ総額が100億円を突破! 未来のスター候補生たちの姿にウットリしながら、たくさんの関係者にお話を伺いました。その中でも、特に印象深かった4人の方の言葉をお届けします。
島川オーナーとアドマイヤキラメキの2011
赤見 :落札おめでとうございます。
「どうやって払おうかな(笑)。いつもそう思うよ。高い馬はたまにしか走らないからなぁ」
赤見 :この仔のどの辺りが一番気に入りましたか?
「どこっていうのはないけど、みんないい馬だって言ってたし、血統もいいから。体はスラっとしてて、筋肉のバランスがいいよね。ただ、さっき(落札後の写真撮影)すごくハネてたからなぁ。ちょっと心配」
赤見 :すごくいいバネしてるように見えましたけど。
「本当(笑)? もしそうだったらいいけど。これからどんな風に成長してくれるか楽しみだね」
1億円越えのスーアの2011
「(上場番号)95番(ダイヤモンドディーバの2011)は競り負けたよ…。本当はもう1歳世代はいいのが揃ってるから、そんなに買う気はなかったんだけどね。スーアの2011は底力がありそうな感じが気に入ってたから、頑張ってみようかなと思って。誰かが必ず競って来るね(笑)。
1歳世代は今日の馬たちはもちろん、他にもすごくいい馬がいるからかなり充実してるよ。今の2歳もすごくいいよ。これからどんどんデビューするから楽しみだね」
松田師「肩のラインをチェック」
赤見 :当歳、1歳たちを見分けるコツを教えて下さい。
「調教師によって色々な見方があると思うけど、僕の場合は写真で見る時にはまず肩のラインをチェックしますね。肩のラインが立ってる馬は、脚を高く上げて走る傾向にあるのでダート向き、肩のラインが寝ている馬は脚を前に出して走る傾向にあるので芝向き、という風に見ていきます。
今の競馬は2歳から1600m辺りでスピードを発揮しないと勝てないから、そこを考えると背中が短めの方がいい。結局、前脚と後ろ脚の共同作業になるわけだから、背中が長いとそのバランスが難しいんです。
実馬が見れるなら、右から、左から、後ろから、前から全部見ますね。前から見た時、胸前は狭い方がいいんです。脚を運ぶ時に一本の線上にスムーズに運べますから。胸前が広い馬は掻き込むような走法になるから、ダッシュがつくしダート向きですね」
赤見 :芝・ダート・長距離・短距離向きなど、それぞれ好みもありますよね。
「その通りです。馬の見方は決して1つじゃないですから。今お話ししているのは私の中の基本です。
若馬の話ではないですが、パドックで歩いてる馬を見る時には、頭の位置を見てあげるといいですよ。馬の個性もありますが、頭が高いと集中してないことが多いし、後ろ脚の踏み込みが浅くなるんです。だから自然な位置で低いところにある馬がいいですね。
あと蹄ですが、芝の道悪やダートに適しているのは蹄が小さめで立ってる馬。芝向きやレコード決着のような高速馬場は、蹄の大きい馬が向いています」
赤見 :先生が手掛けたクロフネやキングカメハメハの子供たちは気になったりしますか?
「そうですね。たくさん活躍馬を輩出してくれて嬉しいです。クロフネは父フレンチディピュティの筋骨隆々の逞しさと、母の素直な骨格が上手くブレンドされているんです。キンカメは、蹄が大きすぎず小さすぎずだったから、その蹄が子供たちにも遺伝しているようですね。だから芝でもダートでも結果を出せるんだと思いますよ」
スカイディーバの2012、当歳最高2億5千万円
「こんなに高くなるとはね。ここまで高い値段の馬は初めてなんですよ。高いからって走るわけじゃないからなぁ(苦笑)」
赤見 :どの辺りに惹かれましたか?
「池江先生たちに教えてもらいながらですが、全体の雰囲気が素晴らしいです。歩く姿も含めて、他の馬と比べて断然でした。このまま順調に育って欲しいですね」
名伯楽・池江泰郎元調教師
赤見 :先生、やっぱりすごいことになりましたね。
「今は里見さんにアドバイスをさせてもらってるから、競り落とせて良かったよ。血統がいいのはもちろん、馬体の形、バランスが素晴らしいね。歩く時の動きも柔らかそうで、本当にいい馬だと思ったね」
赤見 :若馬を見る時に、一番大切にしていることはなんですか?
「やっぱりバランスだね。パッと見た時の全体のバランス、これが一番重要じゃないかな。スカイディーバの2012は、他の馬と比べても抜けてたから。成長が楽しみだね」
これから成長とともにいくつもの試練を乗り越えてデビューを果たす若馬たち。1年後、2年後に、どんな姿で競馬場に現れるのか…今から待ち遠しいです! [取材:赤見千尋/美浦]
◆次回予告 次回は栗東から常石勝義さんがリポート。知られざるスターターの仕事に迫ります。公開は7/24(火)18時、お楽しみに。
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常石勝義
常石勝義 1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っているほか、えふえむ草津(785MHz)の『常石勝義のお馬塾』(毎週金曜日17:30〜)に出演中。