主催者の努力で成果あり、2012年セレクションセール

2012年07月18日(水) 18:00

 HBA日高軽種馬農協主催の「セレクションセール」が7月17日に新ひだか町静内の北海道市場を会場に開催された。前日まで曇りや雨が続き天候不順だったが、一転してせり当日は朝から好天に恵まれ、夕方までたっぷりと夏の太陽光線が降り注ぐ陽気の下せりが行われた。

 昨年のセレクションセールは2日間にわたり開催され、やや間延びした感が拭えなかった。結果もやや厳しいもので、平均価格や売却率が落ち込んでしまった。その反省から、今年は「より上質馬を厳選した」と主催者側が胸を張るように、1日開催でこなせるだけの頭数に絞り込み、219頭の上場となった。

2012セレクションセール会場

2012セレクションセール会場

 展示は前日(16日)に行い、17日は午前10時からのせり。今回の大きな特長は「最低でも500万円を割り込ませない」という主催者側の強い姿勢であろう。せり形式はリザーブ制だが、見ていると確かに昨年まで散見した300万円、350万円という購買者からのコールがことごとく姿を消して、鑑定人が500万円のラインを堅守していた。これは大きな「進歩」と言っていい。

 名簿上は219頭の上場予定馬がいたが、当日8頭が欠場し、211頭(牡158頭、牝53頭)が上場された。落札は129頭(牡106頭、牝23頭)。前年より上場頭数で-149頭、売却頭数で-72頭となったものの、売却率は5.31%上昇して61.14%。売り上げ総額は15億8172万円(税抜き)。

 平均価格は1226万1395円(牡1327万4575円、牝759万1957円)。売り上げ総額は、上場頭数が大幅に少なくなっただけに2憶6145万円減少したのだが、逆に平均価格は前年比で309万1395円も上昇し、2007年以来となる1200万円台を回復した。

ラフォルトゥナ2011

ラフォルトゥナ2011

タイキマドレーヌ2011

タイキマドレーヌ2011

 最高価格馬は157番「ラフォルトゥナ2011」(牡鹿毛、父キングカメハメハ、母ラフォルトゥナ、母父サンデーサイレンス)の3255万円(税込)。落札者は高橋仁氏。生産者・販売申込者は(有)笠松牧場。ダービー馬ディープスカイの生産牧場としても知られる浦河の名門牧場である。

 次点は198番「タイキマドレーヌ2011」(牡栗毛、父ネオユニバース、母タイキマドレーヌ、母父ブライアンズタイム)の3202万5000円。大樹ファーム生産で(株)RRAの所有。飼養者はチェスナットファーム。

 今年は一昨年以来となる税抜き3000万円を超える馬が3頭出た。また、2000万円以上の落札馬も15頭に及んだ。昨年は2000万円超がわずか3頭に過ぎなかったことを考えると、格段の好成績と言える。

 日高の生産者にとっては、アウェー感の強いセレクトセールよりも、このセレクションセールに軸足を置き力を注ぎたいところ。上位価格馬の父馬欄にはキングカメハメハ、ネオユニバース、ダイワメジャーなどの社台系種牡馬が数多く並んだが、これらはセレクトではその他大勢の中の1頭に過ぎなくても、ここではそれなりに高い評価が得られる。

 そして、相対的にセレクトよりはるかに平均価格が安いことからも、このセレクションSはそれだけ「買いやすい市場」だとも言える。後は、この市場から育った馬たちの活躍が、何よりの後押しとなるはずで、落札馬たちの出世を願うばかりである。

 なお、荒木正博・日高軽種馬農協組合長はこの市場を総括して「80点」と点数を付け、「従来顔を見たことのなかった人や若い新しい馬主の顔も増えた。今年はより上場馬を厳選した甲斐があったと思う。天候にも恵まれた。来年も今年の成果を踏まえてより良いセレクションセールにして行きたい」と語った。

 最後に。「最低価格500万円」のラインを厳しく守ることができたことは何よりであったと評価したい。そもそもが生産者(販売申込者)の設定する「希望最低価格」はもっと重視されなければならない。

 8月下旬には国内最多の上場頭数となる「サマーセール」が開催される予定だ。ぜひ、「お台付け価格を無視したような低価格」は、鑑定人の権限で却下するくらいの強い姿勢を見せて欲しい、という複数の生産者の声があったことを付記しておく。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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