はやくも英国では2013クラシック予想

2012年07月25日(水) 12:00

 英国の芝平地シーズンが開幕して、ほぼ4か月が経過しようとしている。すなわち、日程的にもシーズンの折り返し点を過ぎたわけだ。

 番組的にも、前半戦の総決算であるキングジョージ6世&クイーンエリザベスSが終わり、次の目玉開催であるグッドウッドのグロリアス・グッドウッド(7月31日〜8月4日)からは、ファンの感覚的に言っても「夏開催」の季節である。

 日本と異なり、夏開催の期間中もトップホースの出走する基幹G1が組まれている英国ではあるが、一方で日本同様、この時期になるとメディアで取り上げられる機会が増えてくるのが2歳馬たちの動向だ。

 現時点で、来年の2000ギニーへ向けたアンティポスト(長期前売り)でブックメーカー各社が横並びで1番人気(オッズ8〜13倍)に推しているのは、6月末のこのコラムで取り上げた新種牡馬ニューアプローチ産駒のドーンアプローチ(牡2)である。

 管理するジム・ボルジャー調教師のオーナーブリーディングホースである同馬(馬主名義はボルジャー夫人)。3月25日という早期のデビューから無傷の4連勝で、ロイヤルアスコットのG2コヴェントリーS(6F)を制したところまでは6月末のコラムでご報告した通りだが、その後、この馬の“controlling share(=決定権を保持出来るだけの権利)”を、シェイク・モハメドの競馬組織ゴドルフィンが収得。少なくとも年内はボルジャー厩舎に留まるものの、ドーンアプローチは次走からゴドルフィンの服色で走ることになった。

 思い起こせば、ボルジャー夫人が所有しボルジャー師が管理していた同馬の父ニューアプローチを、2歳9月の時点でゴドルフィンが買収したのは、今から5年前の2007年のことだった。ニューアプローチは翌年、シェイク・モハメド夫人であるプリンセス・ハヤの服色を背負って英ダービーや英チャンピオンSを制したが、ゴドルフィンとしては「夢よ、もう一度」という思いで仕掛けたトレードと言えそうだ。

 ドーンアプローチの次走は8月25日にカラで行われるG2フューチュリティS(7F)になる模様だ。

 来年のダービーへ向けたアンティポストで、各社11倍〜13倍のオッズを掲げて1番人気に推しているのが、マーズ(牡2、父ガリレオ)である。管理しているのはエイダン・オブライエンだから、目下のところ来季の牡馬の英国クラシック本命馬は、ともにアイルランド調教馬ということになる。

 1つ年上の姉に昨秋のG1伊グランクリテリウム(1600m)勝ち馬ナイヤーラ(父ケイプクロス)、叔父にヘイドックのG1スプリントC(6F)を含めてスプリント重賞3勝のインヴィンシブルスピリットがいて、祖母がG1仏オークス馬ラファーという血統背景を持つマーズ。

 早くから評判になっていた馬で、デビューを前にした段階ですでに「ダービー候補」に祭り上げられていたのだが、7月16日にダンドークのメイドン(AW7F)でデビューの日を迎え、このレースを4.3/4馬身差で快勝。多くのブックメーカーが2000ギニーの前売りでドーンアプローチに次ぐ2番人気に推し、ダービーへ向けた前売りでは各社、ドーンアプローチを2番人気に蹴落として本命の座に就けることになった。

 マーズは果たして、厩舎の先輩であるキャメロットのようになれるのか!? メディアやファンの間で早くも、論争の的となっている。2000ギニーに向けた前売りで、他社と一線を画すオッズを提示しているのがラドブロークスだ。

 ドーンアプローチ本命は他社と変わらぬものの、同社はマーズを前売りリストから外し、代ってレックレスアバンダン(牡2、父イクスチェンジレート)を、オッズ21倍で2000ギニーの2番人気に推しているのである。

 叔母に北米で走ってG1アメリカンオークスやG1クイーンエリザベス2世CCを制したティッカーテープがいて、近親にはG1レイシングポストトロフィー勝ち馬クラウンドプリンスがいるという血統背景を持ちながら、マイナーな1歳市場にて2万4千ポンド(当時のレートで約300万円)で購買された同馬。

 クライヴ・コックス厩舎に所属し、5月19日にドンカスターのメイドン(5F)でデビュー勝ち。次走ロイヤルアスコットのG3ノーフォークS(5F)も白星で通過。そして3戦目はフランスに遠征し、7月22日にメゾンラフィットで行われたG2ロベールパパン賞(1100m)を快勝。破竹の快進撃を続けているのがレックレスアバンダンである。

 一方、来年の牝馬クラシック初戦となる1000ギニーへ向けたアンティポストで、各社7倍〜11倍のオッズを掲げて1番人気に推しているのが、ニューファングルド(牝2)だ。

 ダーレーのアメリカにおける生産馬であるこの馬もまた、6月末のこのコラムで取り上げたニューアプローチの産駒である。プリンセス・ハヤの所有馬として、英国のジョン・ゴスデン厩舎所属となったニューファングルドは、6月8日にニューマーケットでデビューを果たし、距離6Fのメイドンを4.1/2馬身差で快勝。続いてロイヤルアスコット4日目(6月22日)に組まれたG3オルバニーS(6F)に駒を進め、ここも2馬身半差で優勝。無傷の重賞制覇を果たしている。

 今後のヨーロッパは、8月12日にアイルランドのカラでG1フェニックスS(6F)が、翌週の19日にはフランスのドーヴィルでG1モルニー賞(1200m)が行われる予定で、2歳チャンピオンを巡る戦いと、来年のクラシックへ向けた戦いが、同時進行する形で激化していく。日本同様、ヨーロッパの2歳馬たちの動向にも、ぜひご注目いただきたいと思う。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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