2012年08月09日(木) 12:00
一歩を踏み出す勇気、それは条件が整った時にこそ出てくるものだが、現実はそうでない場合が多い。その決断は、先に何があるかわからないときにはそうしているもの。つまり、どうなるか不透明であっても、現状に見切りをつけるため前に進むことがよくある。
一歩進めることで新しい世界が広がることを知れば、勇気をもってそうするものだと思う。人は日々変わる、ある面、そう捉えて間違いないのは、こうした心の動きがあるからだろう。だから、人とは心して接すべしだ。
この、心して接すべしをどう捉えるか。みんながこのことに悩んできた。詩人の長田弘さんは、こう記している。
「あらゆるものには距離があるのだ。あらゆるものは距離を生きているのだ。そして、あらゆるものとのあいだの距離を測りながら、人間はいつも考えているのだ。幸福というのは何だろうと」。
一歩踏み出したいと切望しつつも、他との距離をどう測るか。人の世はムズカシイ。
その点、競馬の世界は分かりやすい。人の世の幸福を定義してきたものが距離なのに対し、競馬では、一にもニにもレースに勝つこと。ひとつ勝つことで新しい世界が広がるし、一歩踏み出すことでめざすものはさらに大きくなっていく。そして、それをサポートするのが、他ならぬ人間だ、自らがかなえられないものを、パートナーの馬がかなえてくれるのだ。
この夏、初重賞制覇のシーンが続く。先週も、レパードステークスでホッコータルマエが、小倉記念ではエクスペディションがステップアップの勝利をつかんだ。そして、次なる目標がはっきり見えている。さらに一歩踏み出す道すじが、目の前にあるのだ。
現実の生活ではすっきりつかめないものを、競馬なら、はっきり見せてくれる。ひとときの快感を競馬にもとめる意味は大きい。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。