2012年08月17日(金) 18:00 1
15日の大井・黒潮盃は、アスカリーブルが圧巻のレースを見せた。牝馬ながら別定重量でメンバー中もっとも重い57キロを背負い、それでも単勝2.2倍の1番人気に押し上げたファンもたいしたものだと思うが、見事なレースぶりでその期待にこたえて見せた。
もう1頭、ぼくが注目していたのは、佐賀から遠征してきたエスワンプリンス。九州ダービー栄城賞での圧倒的な強さを佐賀競馬場で見ていて、これはもしかして全国レベルでも通用するかもしれないと思っていたからだ。
その栄城賞の直後、管理する手島勝利調教師はジャパンダートダービーへの遠征を明言していたが、実際には出走せず。地方のみの全国交流である、この黒潮盃にまわってきた。
そして結果は3着。4コーナーで先頭のディーオに並びかけ、直線ではアスカリーブルに交わされたものの、それでもバテることなく1.1/4+クビ差で全国区で通用するところを見せた。佐賀からの長距離輸送に加え、アスカリーブルと同じ57キロ。2着のディーオ、4着のダイヤモンドダンスらより1キロ重かったことを考えれば価値ある3着だ。
地方競馬では2006年に『ダービーウイーク』がスタートし、全国のダービーからJpnIのジャパンダートダービーへという道ができた。しかし南関東以外の各地のダービー好走馬にとって、JRAの一線級が出走してくるジャパンダートダービーの壁はやはり高く、その約1か月後に行われる黒潮盃への挑戦も目立っている。
特に近年、黒潮盃で好走した他地区所属馬の中でも、カラテチョップ(兵庫ダービー優勝→黒潮盃3着)、オオエライジン(兵庫ダービー優勝→黒潮盃優勝)、エスワンプリンスらは、ジャパンダートダービーをスキップして黒潮盃に出走している。
ダービーウイーク以降、南関東以外の馬でジャパンダートダービーで好走したのは、2006年に岩手のオウシュウクラウンが3着に入ったのみ。南関東以外の地方馬にとってジャパンダートダービーは、ほとんど手の届かない高みとなってしまっている。
ならば、地方同士の交流である黒潮盃を狙うほうが現実的と考えるのも当然のことだろう。ローテーション的にも2か月強の間隔があり、じっくり調整することもできるし、地元で格下相手にひと叩きもできる。黒潮盃の1着賞金1800万円は、南関東以外の馬たちにとっては十分に魅力的な高額賞金だ。
実際にダービーウイークを取材していて、各地のダービー上位馬の関係者に話を聞くと、ジャパンダートダービーではなく黒潮盃を目指すという陣営が増えてきているのを感じる。
秋の岩手に復活した地方全国交流のダービーグランプリと併せ、地方3歳のチャンピオンを争うレースとしてプロモーションすれば、黒潮盃はもっと盛り上がるレースになると思うのだが、どうだろう。
昨年のオオエライジン、そして今年のエスワンプリンスを見て、黒潮盃は全国的にもっと盛り上げるべきレースとしての可能性を感じた。
斎藤修
1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。