2012サマーセール、ディープ産駒が2000万円台で落札

2012年08月29日(水) 18:00

2012年サマーセール会場

2012年サマーセール会場

 8月20日(月)より24日(金)まで5日間にわたり北海道市場(新ひだか町)を会場に行われた「サマーセール」は、連日好天にも恵まれて盛況のうちに幕を閉じた。

 5日間で上場された頭数は1190頭。うち566頭が落札され、売上総額は24億2835万6000円。前年比4億112万4000円の増加で、売却率も47.56%といずれも過去10年間で最も高い数字を記録した。また平均価格も429万0382円と前年比38万4342円の増加で、2009年の436万8636円に近い水準まで戻った。

 2003年には1010頭が上場されたものの、わずか226頭しか売れず、売却率も22.38%にとどまっていたことを考えると落札頭数と売却率はともに倍以上の伸びであり、確実に市場での購買が馬主層に浸透してきていることを物語っている。

 これに伴って、かつて数多くいた主取り馬の出てくるのを待ち構えるバイヤーや仲介業者が、すっかり影を潜めた。「むしろ場外の方が活発なセリになっていた」とも揶揄されるほどの見苦しい光景がほとんどなくなったのは、それだけ市場が健全化したとも言える。このこと自体は評価できる。

 ただし、個別に見て行くと、相変わらず「投げ売り」が目立つ市場であった。お台付け価格は事前に届け出ており、それが「希望最低価格」であることは言うまでもない。しかし、販売する側と購買する側との希望が必ずしも一致せず、250万や300万円のお台付け価格でありながら、いきなり100万円、150万円と声のかかる上場馬がかなりいた。

 もちろんそこで拒否することは自由だが、販売者(ほとんどの場合は生産者自身である)にとってみれば「なるべくこの市場で売っておきたい」事情と、購買希望者が複数いた場合には、ある程度の金額までせり上がるかも知れない期待が頭を過ぎり、そこで100万円のコールを受け入れてしまうのである。

 しかし、そんな期待も空しく、最初にかかった一声で落札されるケースが続出した。また複数のバイヤーが競り合っても、価格が伸び悩む上場馬が少なくなかった。その結果、今回もまた低価格馬が目立つ市場となった。税込100万円未満が9頭、100万円以上200万円未満が112頭に達した。また税込210万円の馬だけでも50頭に上った。

 激しくせり上がる馬も決して少なくはなかったものの、それ以上に低価格馬がより目立つ市場であった。100万円、150万円といえば、かつてはオータムセールの風景で、あとがない最後の市場の叩き売り価格である。それが、近年はより前倒しで早くもサマーセールからダンピングが目立つようになっている。

 今に始まったことではないが、こうした低価格馬の種牡馬欄を見ると、種付け料すら回収できていないケースが散見される。多くの購買者によって公明正大に“評価”されるのが市場とはいえ、生産者にとっては何とも厳しい結果と言わざるを得ない。売上総額と平均価格の上昇を実感できた生産者が果たしてどれくらいいたことか。

ブラッシングブライド2011

ブラッシングブライド2011

ツルマルオトメ2011

ツルマルオトメ2011

 なお、最高価格馬は3日目に登場したディープインパクト(この市場唯一のディープ産駒)を父に持つブラッシングブライド2011の2625万円(税込)。ショウナンの冠名で知られる国本哲秀氏が落札した。販売申込者は(有)社台コーポレーション白老ファーム。

 牝馬の最高価格馬は556番ツルマルオトメ2011の1627万5千円。父ダイワメジャーで販売申込者は(有)駿河牧場。落札したのは井山登氏。

 昨年15頭にとどまった税込1000万円以上の落札馬が、今年は一気に37頭となり、価格の落差が目立つ市場でもあった。当然のことながら、同じ種牡馬の産駒でもひどく明暗を分ける結果となった。

 最高価格馬は牡牝ともに3日目に登場し、この日が売上のピークで、4日目と5日目は数字を落としてしまった。とりわけ期待の大きかった最終日の1241番以降(セレクションセール主取り馬がここで上場された)が、案外な成績に終わったことも不振の要因であった。

 市場全体を通じて主催者の荒木正博・日高軽種馬農協組合長は「83点」と採点し、「目標を20億円ラインに置いていたので達成できて何よりでした」としながらも、せり後半に売れ行きが失速してしまったことなどを踏まえて「5日間は長すぎるのかも知れない」と総括した。

 それにしても、例年にないほどの暑さの中で5日間にわたり馬を上場させた牧場関係者にはお疲れ様でしたと申し上げておきたい。

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田中哲実

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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