2012年09月05日(水) 18:00
去る8月26日(日)、根室管内中標津町で第36回馬事競技大会が開催された。
今年で数えること36回目となるこの草競馬は、周回コース(ダート)とばんえいコース両方を使用して1日で全31レースを行うのが大きな特色だ。主催は、標津・中標津地区馬事愛好会。標津町と中標津町、北海道新聞社が後援している。
馬事愛好会という名前のとおり、この草競馬は民間団体によって開催されており、年に1度だけ使用される特設競馬場にて実施される。1週間前から整備を始めたというこの競馬場は、外周が1000mのダートコース、中に200mのばんえいコースを有する。内馬場には出走馬が乗せられてきた馬運車や関係者の車両などが並ぶ駐車場も兼ねており、一段高くなったところにこの空間で唯一の屋根付き小屋が建つ。そこが「本部席」である。
周回コース直線部分の外側の、道路との間の幅数メートルのエリアが観客席であり、露店の建ち並ぶ場所でもある。かなり狭隘なスペースだが、第1レースが出走する時刻(午前10時)には、近隣から集まった観客が思い思いの場所を確保して、レースの始まるのを待っていた。
馬はポニーから大型の農用馬まで雑多である。ポニーも、ばんえいと周回コースの平地競馬と両方いるし、トロッターは午前に速歩競走に出走し、午後はソルキーを装着して繋駕競走に出る。1頭が複数回出走するのが草競馬の大きな特長だ。
ポニー競馬では熾烈な先頭争いも
31レースをこなさなければならないので、しばしば周回コースとばんえいコースでは同時にレースが行われる。また、ただでさえレース数が多い上に、当日の朝になりエントリー数に応じてレースがしばしば変更となるのもこの草競馬ならではの光景だ。順番の入れ替わりは日常茶飯事で、放送によって変更されたレースについての説明は一応流されるものの、よく聞いていないと理解できない。
この草競馬を毎回たった1人で実況するのが釧路からやってくる迫田重栄アナ。この日はあいにくの霧雨模様となり、気温は25度程度とやや肌寒いくらいだったが、迫田アナは終日喋り続けていた。
出走馬は当日の朝来場して参加料5000円を支払う。それで最大2レースまでの出走が可能となる。3レース以上は別途参加料を支払わなければならない。
ポニーばんえい競走も迫力あり
ここでは、ことばんえいに関してはプロとアマが混在している。帯広競馬場からプロの人馬が来場しており、一般人に混じってレースに出ていた。近年、大型馬は少なくなりつつあり、代わって小型のポニーによるばんえい競走が盛んになってきているという。
見ていると、体高はなるほど低いが、体つきは明らかにばんえい馬のそれになっている。ポニー輓馬はD〜Aまで4つに分類され、斤量も50キロ〜170キロとかなり幅がある。170キロを曳くポニー輓馬Aクラスに出てくる馬たちはどれもひどくマッチョな体型に“改造”されていた。
ベテランライダー、野呂達雄さん
颯爽と馬を操る三田牧男さん
総じて草競馬に興じる人々は高齢化が進行しており、この先かなり雲行きが怪しい。と同時に、主催者側の事情もあって、正直なところいつまで続けられるかまったく分からない、という声を耳にした。
大会委員長の亀田英二さん(中標津町)によると「この地は馬で開拓してきたにも拘らず、地域の農協も行政も名前こそ連ねているのに、この草競馬には理解が足りない。開催にあたって協賛金(寄付)を募り何とか運営しているが、それも年々減りつつけており、最近は基金を取り崩しているのが実情で台所事情は苦しいんです」と打ち明ける。
古くは映画の舞台にもなったこの中標津の馬事競技大会。何とか1年でも長く存続されることを祈りたい。
なお、お隣の別海町では、来る9月15日(土)と16日(日)の両日にわたり、ここと同じように草競馬(馬事競技大会)が開催予定である。別海は土曜日が周回コースで、日曜日がばんえいコースでそれぞれ日をずらして実施されることになっている。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。