2012年09月12日(水) 18:00 4
まだ1か月以上も先の締切だが、早くも来春開講予定(1か年)のBTC育成調教技術者養成研修第31期生の募集が始まっている。この制度は不足する生産地での育成現場に、即戦力として就労できる人材を育てることを目的として創設され、現在研修中の30期生は今春ここに入り約5か月が経過したところだ。
前回ここを訪れたのは確か開講直後のことで、騎乗訓練が始まったばかりの頃であった。21人の30期生が乗馬経験者と未経験者に分けられて訓練を行う様子を見学させてもらった。乗り始めたばかりの研修生は、常歩と軽速歩を繰り返し練習されられており、指導教官から絶えず騎乗姿勢のチェックを受けていた。
4か月の研修で技術も向上
2周目からは2騎ずつの併走
しかし、それから4か月が経過し、訓練は屋外の800m馬場にて駈歩で併走する段階まで進んでいる。この日(9月11日)は、ちょうど半数の研修生がJRA日高育成牧場にて1歳馬(JRA育成馬)の初期馴致を見学するため不在で、残りの半数が午前に1鞍だけ騎乗訓練をしていた。馬装をして騎乗した研修生8人が輪乗りで入念にウォーミングアップする。曇り時々晴れながら湿度の高い蒸し暑い日で、誰もがすでに汗だくである。教官から1人ずつに指示が飛ぶ。
最初は縦列での速歩だが、2周目からは隊列を変えて2騎ずつの併走になる。内と外に2騎ずつ4組が一定間隔を置いて周回してくる。最後はハロン22秒程度までスピードアップする予定、とのことだったが、見た感じではそこまで出ていないようだ。
教官が合議の上で、あらかじめ馬と研修生との相性や技量などを勘案して騎乗馬とポジションを決める。これがなかなか難しいそうだ。また、今は走路に教官が入らず、ラチの外で見守り指示するだけにとどめている。研修生の自主性を育てるため、だという。
速歩を含め3周(2400m)でこの鞍は終わった。常歩で厩舎に戻った後は、洗い場に騎乗馬を繋ぎ、入念にシャワーをかけ手入れをする。人馬ともに汗だくである。JRA日高育成牧場での研修は3週間交代で、来月上旬からは今残っている9人が出張するらしい。
言うまでもなく、JRA育成馬は今年7月~8月にかけて各地で開催された1歳馬市場においてJRAが購入した馬たちだ。来春のブリーズアップセールへ向けてこれから調教が始まる。BTC研修生はまだ「見学」の段階だが、年が明けた1月からは実際にこれらJRA育成馬にも騎乗する機会が与えられる。
だいたい今のところ順調に研修メニューが消化されている印象だが、いくつかの問題も生じているらしい。そのひとつが、すでに2名の退所者を出していることである。教官の1人が「それぞれ理由は違いますが、訓練途中でリタイアするのは何とも残念ですね。選抜試験を経てせっかくここに入り、訓練を受け始めたので、できれば続けさせてあげたかったんですが」と表情をやや曇らせながら語っていた。
即戦力となるための訓練がつづく
卒業生の就職率は100%
1年間に及ぶ訓練は、即戦力の養成が目的なのでかなりハードなものになる。当然、途中で多くの研修生が何度もスランプに陥り、場合によってはメンタルケアが必要な事態も招くらしい。この日もちょうど騎乗訓練を見合わせ教官と面談している研修生がいた。馬場入りしたのが8人しかいなかったのはそのせいである。また、せっかく大手の育成牧場に就職しても、今春には「3日で退職した」例もあったという。育成現場ですでに戦力として働いている卒業生ばかりとは限らないのだ。
9月13日(木)には今年3回目となる「体験入学」が実施されることになっており、13名が来場予定という。「すでに7月、8月と2回体験入学を実施していますが、今回と合わせて45、6名になります。やはり馬の仕事を目指してここの門を叩くからには、ぜひ体験入学には来ていただいたほうがより理解は深まると思います」とはある教官の弁だ。
なお、願書受付の締切は10月19日(金)必着。募集人数は概ね20名程度。ここで1年間の訓練を経た研修生は就職率100%である。そこから先は各自の努力とセンスが必要だが、競馬業界、とりわけ育成の現場で働きたいと考えている若者にとってこの研修制度は得るものが大きく、ぜひチャレンジしていただきたいと思う。
詳細はBTCホームベージを参照のこと。問い合わせ先は042-358-1173(財)軽種馬育成調教センター管理部。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。