ステイゴールドの育んだ宝石たち

2012年09月27日(木) 12:00

 人は誰もが胸のなかに、宝石となる石をもっている。よい師匠を選んで、美しく光り輝やく玉に育ててもらうのだ。宝玉は、はじめから宝玉の形をしているわけではない。一所懸命磨いて光り輝やく玉となるという言葉には、どう生きていくかの道すじが見えている。そして、どう関わるかも。

 サンデーサイレンス産駒は完全燃焼して駆けるタイプが多いのに、ステイゴールドはそうではなかった。ずるいところがあって、無理に走らないところがあったのだ。それが海外に遠征するとそんなところがなく、最後まで闘志を燃やすのだから、不思議な馬でしたと管理していた元調教師の池江泰郎さんは語っておられた。

 もしかしたら、ステイゴールドのなかにある石は、池江さんの一所懸命な磨き方で今日の宝石になれたのかもしれない。

 初勝利に5戦も要したのではなく、そうするのが一番よかったのであり、春クラシックは、出走できなかったでのはなく、そうはさせなかったのだ。少しずつ気の向くように育て、7歳にして香港でGI制覇を果たせた。しかも、これが現役最後のレースとは。

 ステイゴールドは、力のいる馬場や雨で重くなった馬場を得意とした。産駒は、その特徴を身につけ、しかも、長くいい脚を使うものが目立つ。さらに目立つのが、その成長力だ。叩き上げの晩成型というイメージを成長力に置き換えたのが、活躍する産駒たちだ。

 しかし、ドバイ・シーマクラシックや香港ヴァーズの勝利は、一流競走馬としての資格十分だ。その競走成績も見直すべきかもしれない。日本馬が世界のステージに立つことを目指す時代だからこそ。

 オルフェーヴルは、ステイゴールドの胸のなかにあった宝石だし、3歳のフェノーメノもゴールドシップも秋のタイトルに手の届く宝石だし、4歳のナカヤマナイトも、成長力で頂点を見据えている。楽しい秋の到来だ。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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