ロードカナロアの持つ財宝

2012年10月04日(木) 12:00

 財を積まざるを以て心とし、こういう言葉がある。これに関連して、積善の家に余慶あり(せきぜんのいえによけいあり)とつなげていけるのだ。お金を儲けることだけに執着して、それを生かすことをしないのはよろしくないという教えにもなるのだが、とにかく得た財を世のために使ってこそで、善いことをした家には喜びごとが多いものと言われてきた。

 財はなにかのために使ってこそ生かされると言えば、競馬でビッグタイトルを手にした馬の姿からも見えてくるものがある。得がたいほどの財宝、この場合は鍛練し磨きぬかれた実力、もちろんその前提に、稀に見る資質が備わっているのだが、その力をここ一番の舞台で使い切る、正に自ら財をタイトル獲得のための生かす姿がそこにあるのだ。

 新しくスプリントチャンピオンに輝いたロードカナロアにも、それを見る思いがした。4歳の秋は、サラブレッドにとっての充実のとき。レースではいつも全力を出し切る、どな競馬でも出来るのがロードカナロアの強みなのだが、この得がたい財宝をどうレースで使うかは、手綱を任された岩田騎手の役割。

 それを生かしてこその任を背負って、まず最初に戦ったのが、阪神のセントウルSだった。この2着を、負けて申し訳なかったと言った岩田騎手は、この最初の騎乗で並々ならぬロードカナロアの資質を感じ取っていた。

 抜け出すタイミング、この一点にしぼって、持てるこの馬の財を使い切ろう、そんな気迫が、スプリンターズSのあの戦いに見えていた。目標に定めたカレンチャンが、ベストの状態でベストの戦い方をしてくれたのも幸運であったと思う。あの快記録は、好ライバルがいてこそだった。

 少し意味は異なるが、財を生かす場がレースと考えれば、そこで財を生かすことで余慶ありとは、これに続く子孫の上に吉事が訪れることで血統の繁栄に繋がっていくのだ。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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