凱旋門賞制覇の夢を引き寄せるために

2012年10月11日(木) 12:00

 運命は、志のあるものを導き、志なきものを引きずっていくと言う。また、強いものは自分の運命を嘆かないとも言われてきた。好運とか悪運とか言うが、どうも運命には偶然はないように思う。それに出会う前に、この自分がそれをつくっているのではないか。だから、運を引き寄せるよう執念深く信じて目標を見据える、そういうことだろう。

 日本のホースマンの40年にも及ぶ凱旋門賞制覇の夢。オルフェーヴルは、確かに強かった。間違いなく世界の頂に立てる器に見えた。どのライバルたちも後方ではないか。なのに、誰も気に止めることもなかった伏兵に残り20mでかわされた。これが競馬なのか。いや、凱旋門賞なのか。運命に偶然がないならば、この敗戦は、伝統の底力によるものと言うべきかもしれない。

 最後の最後にオルフェーヴルらしさと言うべき、内にもたれる悪癖が出てしまい、スミヨン騎手が途中で右ムチに持ち替える様子が見えたとき、目の前に近づいていた夢は、またしてもこぼれ落ちてしまった。

 日本とは異なるターフコンディションを、オルフェーヴルは克服していたと思う。あの抜け出すときのフットワークは、目に鮮やかに残像となっている。ただ、自信の一瞬のスキを疲れたということだ。この運命は、自身が出会う前に自身がそれをつくっていたということだ。ならば、やるべき目標ははっきりしている。どう自身を克服し、乗り越えるかだ。

 ゆるぎない志、これさえあれば、運命はしっかり導いてくてる。ただ、ここで肝心なのは、運命に過度な要求をしないこと。それが強すぎると、いつしか不満の種をつくってしまう。一度、歯車を狂わせると、どこまでも運命に引きずられてしまう。志をしっかり見据えて目標を見失わないこと。いつか、そのときがやってくると信じて。そういうところに伝統が備わっていく。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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