2012年10月10日(水) 18:00
先日、ハギノカムイオーに会ってきた。父テスコボーイ、母イットーという血統のサラブレッドで、1979年4月1日に浦河町・荻伏牧場にて生まれた。当歳時に市場取引馬としては異例の高額(1億8500万円)にて落札され、一躍注目される存在となった。
デビューは1982年1月。当時の表記でいう4歳になってからであったが、7馬身差で新馬戦を楽勝し、続く桜草特別、東上してスプリングステークスと3連勝を収め、皐月賞では一番人気に支持された。
ハギノカムイオー
種牡馬入りしたのは1984年。同馬の共同所有者であった中村和夫氏が経営するスタリオン中村畜産にて種牡馬生活を送った。だが、周知のように自身を超える産駒にはついに恵まれず、2000年に種牡馬を引退し、現在は新ひだか町三石本桐にある(有)本桐牧場にて静かに余生を過ごしている。
現在33歳と6か月である。サラブレッドとしての長寿記録は周知のように、同じ浦河産の5冠馬シンザンが持つ35歳3か月11日だが、ハギノカムイオーはその記録を追いかけており、こちらのほうでも今後は特に注目されることとなるだろう。
カウントダウンはまだ先の話だが、シンザンとハギノカムイオーは誕生日が1日違いで、カムイオーのほうが早い。ということは、再来年のシンザンの命日(7月13日)を迎えた時点でカムイオーが生きているならば、長寿記録を自動的に更新するわけである。一言で35歳というが、これは馬にとってかなり大変な苦労を伴うことで、ハギノカムイオーもこれからが正念場となろう。
先日、会ってきた際には、放牧地で元気に草を食み、私たちが牧柵の近くまで行くと、首を上げてこちらをじっと眺め、そのうち闖入者の正体を確かめるべく“獣道”になった放牧地内のルートをのっしのっしとこちにら向かって歩いてきた。とてもしっかりとした足取りで、毛づやも悪くない。どうかこの調子で長生きしてほしいと願わずにはいられなかった。
さて、余談になるが、シンザンの持つ「軽種馬長寿記録」が、実は更新されていたらしい事実が判明した。
というのは、栃木県日光市にある筑波ライディングパークインターナショナルにて余生を送るマリージョイ号(アングロアラブ、父ダイリン、母トネチドリ、牝馬芦毛、門別・太田二郎氏生産、現役時代の競走名スインファニー、北海道・和歌山にて3勝)が、1976年3月16日生まれながら未だ生存しており、今日の時点で36歳6か月24日に達するのである。
この馬の存在をネットで知り、確認のため、筑波ライディングパークインターナショナルの山内堅志さんに電話でお話をうかがったところ「この馬は今でも毎日散歩に連れて行っており、元気で過ごしています」とのこと。
この馬が長寿記録を更新したことにより、シンザンは「サラブレッドの長寿記録」所持馬となったわけだが、だからといっていささかもその価値が減ずるものではない。
またハギノカムイオーにとっても新たな目標ができたことになり、これからの道のりは決して平坦ではないはずだが、ここまできたらぜひ記録更新を実現してほしいところだ。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。