府中牝馬S

2012年10月12日(金) 18:00

 この重賞出走組と、日曜の秋華賞出走馬に加え、天皇賞・秋、京都大賞典などに挑戦した牝馬がそろうのが11月のエリザベス女王杯2200m。

 最近10年間のエリザベス女王杯で馬券に関係した30頭のうち、約3分の1の9頭が府中牝馬S組であり、同じく9頭が秋華賞グループの3歳馬である。あとは連勝したスノーフェアリーであり、天皇賞.秋の出走馬であったりするが、今週の秋華賞グループと、府中牝馬S組を合わせて「18頭」。注目馬の大半が女王杯と関係する。

 府中牝馬Sの展望に、なにもエリザベス女王杯は関係ないように感じられるかもしれないが、秋のGIシリーズは単独ではなく、それぞれ重なり合っている。的中すれば、小さな足かせも生じ、思考範囲の停止があって、次は外れるケースが多いのがGIシリーズのパターン。逆に「外れたときにこそ(真剣に反省するから)、次の的中が待っている」というなぐさめもある。遠大な展望でいきたい。

 人気のドナウブルー(父ディープインパクト。母は快速系ベルトリーニ産駒牝馬ドナブリーニ)は、日曜の秋華賞で牝馬三冠を達成しそうなジェンティルドンナの1つ上の全姉。

 デビュー当時から人気は姉妹とも同じだが、姉ドナウブルーはちょっとコンパクトにまとまった小型馬で、あまりたくましくなかった。桜花賞もオークスも、秋華賞にも出走はかなわなかった。評判倒れだったようなところもあり、母や祖母の競走成績どおり距離にカベもあったのである。

 でも、ちょっとひ弱い姉がいたからこそ、同じ石坂厩舎に入った妹は、調整方法や調教のパターンなど、おかげで助かった面があるのは否定できない。ドナウブルーの全妹だから、案外、人気の重圧に見舞われなかったようなところもあり、ジェンティルドンナは7戦5勝の二冠馬ながら、1番人気になったのは2歳新馬、未勝利戦と、前回のローズSだけである。

 大レコードで独走のオークスも3番人気だった。小柄であまり期待にこたえられないでいた姉。のびのび育って470キロを超えた妹。いま、世間の大きな注目を浴びるスターに育ったのは妹のジェンティルドンナ。人間の世界にもありそうである。

 しかし、一時は410キロ台にしぼんだこともあった姉のドナウブルーも、充実の4歳秋を迎え、440キロ近くに体つきが成長してきた。まだ細身に見えた春のヴィクトリアマイルを、懸命にしのぎきってホエールキャプチャ(今回はドナウブルーより2キロ重い別定になる)の2着のあと、体の増えた夏の関屋記念はコースレコードである。妹と違って、こなせる距離は2000m前後までにとどまるかもしれないが、関屋記念と同様にスローのみえている1800mなら、距離不安はないだろう。輸送減りも。

 妹とは距離適性も、性格も、成長カーブも異なるが、明らかにひ弱い姉ではなくなった4歳ドナウブルーからいきたい。当然、強敵はここまでの実績で大きく上回るホエールキャプチャだが、今回は休み明けで56キロ。目下の充実度で逆転可能だろう。

 すっかり評価の落ちてしまったマイネイサベル(父テレグノシス)だが、けっして状態は悪くない。先週も、今週の動きにも本来のバネが感じられた。馬群に詰まり、明らかに脚を余したヴィクトリアマイルが、人気の2頭と0秒4〜5差だから妙味十分。

 以下、別に嫌いたい馬はいないから人気上位馬を相手とするが、状態の良さが光るレインボーダリアはぜひ、候補に入れておきたい。

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柏木集保

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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