2003年04月21日(月) 11:47
4月16日・17日の両日、英国のニューマーケットで行われた欧州最高の2歳トレーニングセール『タタソールズ・ブリーズアップセール』は、平均価格が前年比5.7%ダウンの31,904ギニーであったのに対し、総売り上げは歴代最高となる前年比4.8%アップの411万ギニー、中間価格も歴代最高となる前年比25%アップの2万5千ギニーを記録するなど、好調裏に終了した。前年のこのセールが、総売り上げ前年比52%増、平均価格前年比44%増という驚異的な伸びを記録。一般景気を鑑みると数字的なダウンは必至と見られていただけに、大健闘といって良いだろう。軒並み大幅な下落となった北米の2歳セールは、まさに「対岸の火事」に過ぎなかったようだ。
しかも、北米の2歳セールがいずれも中間価格の下落が平均価格の下落を大きく上回る「不健康」な市況であったのに対し、こちらの市況は逆に中間価格が急上昇。一部の大金持ちだけに引っ張られた市場ではなく、真ん中から下の価格帯が底上げされた、産業界にとって誠にヘルシーなマーケットとなった。
最高価格馬は、上場番号72番の父デインヒルの牡馬。父の名声もさることながら、叔父に北米のG1勝馬ホークスター、従兄弟に日本のG1勝馬ブラックホークがいる牝系も一流。しかも追いきりで抜群の動きを示したとあって、値がどんどんと上がり、前年作られた歴代レコードを大きく更新する25万ギニーで、アメリカのニューヨーク州でアンステュ・ファームを営むスボトニック夫妻が購買に成功した。実は、アンダービダーは日本人バイヤーで、この逸材が日本にやってきたかもしれないと思うと、正直言って残念である。
市場2番目の高額馬は、日本人による購買だった。上場番号178番の父サドラーズウェルズの牝馬で、祖母が2歳G2ロウザーS勝馬エラロマーラ、叔父にロイヤルアスコットのG2キングエドワード7世S勝馬フォイヤー、近親に今年の英ダービー有力候補ニューサウスウェールズがいるという良血馬である。3者による激しい攻防戦の末、2歳牝馬としては歴代のヨーロピアンレコードとなる15万ギニーで、関口房朗氏が購買した。これを含めて、日本人によると見られる購買は前年より2頭少ない8頭。
追いきりで抜群の動きを見せて市場6番目の高値となる7万ギニーで購買された父クロコルージュ、母デルタブルーの牡馬、G1クリテリウムドサンクルー勝馬マーシャンドサブレの半弟にあたる父ストラヴィンスキー、母メルカンティールの牡馬(6万ギニー)、甥に凱旋門賞馬パントルセレブルがいる父ファスリエフ、母ペトロルースの牡馬(5万5千ギニー)、従兄弟に種牡馬ヘクタープロテクターや名牝ボズラシャムがいる父レインボウクエスト、母クロエリアの牡馬など、楽しみな素材が揃っている。POGファンの皆様は要注意と言えよう。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。