2012年10月23日(火) 12:00
10月15日〜18日の4日間にわたり開催された「オータムセール」は、当歳と1歳馬を合わせ857頭(牡371頭、牝486頭)が上場され、そのうち439頭(牡218頭、牝212頭)が落札された。売り上げ総額は11億2576万7500円(税込)で、前年比1億3774万9500円の増加である。
1歳市場に限れば、804頭の上場で425頭の落札。総額10億1582万2500円と、上場頭数が20頭、落札頭数で28頭それぞれ前年よりも増加したことになるが、総額では2781万4500円増にとどまり、その結果、平均価格は239万171円と、こちらは前年よりも9万8514円の下落であった。
マイネカプリースの23
(撮影:馬市ドットコム・齊藤宗信)
なお、1歳市場での最高価格は2日目に登場した452番・マイネカプリースの23(父グラスワンダー、母マイネカプリース、母の父タヤスツヨシ、牡栗毛)の1837万5千円(税込)。生産は新冠・イワミ牧場。落合幸弘氏が落札した。
結局、1000万円を超えた落札馬は、初日に2頭、2日目に1頭出ただけで、総体的に安値で落札される1歳馬が目立った。とはいえ、ここで残れば後がなく、来年の2歳馬トレーニングセールを目指してどこかの育成牧場に預けるか、さもなくばオータムセールよりも安い価格での商談に応じるしかない。生産者が自分の名義で競馬に供する選択肢もないわけではないが、それには大きなリスクがつきまとう。いずれにしても、売れ残った379頭にはこれからさらに厳しい現実が待っている。
クラレントの母エリモピクシーが上場
エリモピクシーはディープの仔を受胎
社台ファームやノーザンファームなどから多数の上場があったのも好調に推移した一因だが、それよりも今年の場合は、エクセルマネジメントからの上場馬が断然他を圧しており、中でも注目は64番「エリモピクシー」であった。
同馬は父ダンシングブレーヴ、母エリモシューティング、その父テスコボーイの14歳鹿毛。自身特別4つを含め7勝の成績を持つのに加え、リディルやクラレントの母としても知られている。おまけにディープインパクトを受胎しており(予定日4月18日)、場内は一気にヒートアップした。
価格はどんどん上昇して行き、活発な競り合いの末に9975万円(税込)で山本英俊氏が落札。その直後に場内から拍手が巻き起こった。
上位3傑がすべてエクセルマネジメントからの上場馬で占められ、67番「エリモハルカ」が3360万円、66番「エリモフィナーレ」が2152万5千円と続いた。
オークス馬・エリモエクセル
エリザベス女王杯馬・エリモシック
繁殖馬セールが終わった直後、エクセルマネジメントによるプライベートセールが引き続き開催され、1歳馬3頭と当歳馬5頭が登場し、ここでも「エリモピクシー2012」(牝鹿毛、父ディープインパクト)が7500万円(税抜)で落札された。
エクセルマネジメントはこの日、繁殖馬のみならず当歳も1歳もすべて放出した形だ。普通、エリモピクシー級の繁殖牝馬はまず市場に出回ることがないが、今回は巷間噂される牧場閉鎖がより現実味を帯びてきた印象がある。ただし真相は未だ分かっていない。
ともあれ、良質馬が登場するとセリがいかに盛り上がるかを今回は実証してくれた気がする。昨年179頭が上場され106頭が落札された繁殖馬セールだったが、総額は3億円に届かなかった。それが今年はいきなり倍以上の売り上げを記録し、盛会のうちに幕を閉じた。午前10時に開始されたセリは午後4時半過ぎまでかかり、エクセルマネジメントのプライベートセール開始は4時45分。終了が5時15分であった。
活発な競り合いが多く、想定以上の長丁場になったことを付記しておく。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。