2012年11月16日(金) 18:00
2歳世代のデビューが始まってもう約半年になる。2歳重賞がどんどん増えている。このレースは東京コースの1800m。いま、広がる未来にどんな大きな展望を描いても許される時期だから、東スポ杯は、だれだって出走させたいレースの筆頭に位置する。
しかし、つい7〜8年前までめったにフルゲート近くにはならなかった。18頭立てになったのは、過去16年で1回だけ。厩舎人は相手(馬)を見ているから、意外に常識的なのである。2001年、関東馬が9頭、関西馬が9頭の18頭立てで行われた。勝ったアドマイヤマックスはやがて6歳になり、最初に展望した距離とはだいぶ異なる1200mの「高松宮記念」を制したが、そのほかの17頭はGIホースにはなれなかった。抜けた素質馬がいないとみんなたちまち察知してしまうのである。2003年は16頭立てで行われ、のちのGI馬は1頭も含まれていなかったという記録がある。
ただし、昨2011年、ディープブリランテ、10年サダムパテック、09年ローズキングダム、08年ナカヤマフェスタ。07年はダービー2着のスマイルジャック、皐月賞2着のタケミカヅチ、06年ドリームジャーニー、05年メイショウサムソン……。ここ数年は異なる。のちのビッグレースの主役級が連続して含まれ、かつ、好走している。
2歳戦の開始時期が早くなったこと、回転を早めようという生産に関係するグループの意向が反映されたこともあって、出走数が以前よりずっと多くなり、なおかつ以前とは違って、のちのエース級が含まれることがごく当然のようになったのである。
今年は、札幌2歳Sをレースレコードで快勝したコディーノ(藤沢和厩舎)を筆頭に注目馬がそろった。知られるように、過去、札幌2歳Sの時計NO,2の2008年ロジユニヴァース、NO,3の2000年ジャングルポッケットは、ともに日本ダービー馬である。
藤沢和厩舎は、必ずしも2歳馬の早いデビューにこだわららない流儀だが、素質馬が多いから、2001年2着のマチカネアカツキなど、勝ったことはなくても、この重賞への出走馬は多かった。そして、今年はなんと初めて2頭出しである。厩舎の重賞勝ち馬が極端に少なかったここ数年とは、流れも、波も変化している。
そのコディーノ(父キングカメハメハ、母ハッピーパスはシンコウラブリイの半妹)はもちろん最有力だが、馬券の妙味は、素質は互角と思えるサトノノブレス(父ディープインパクト)にある。
昨年の勝ち馬ディープブリランテとはちょっと異なる体型だが、500キロ近いスケールあふれる体つきと迫力は同じ。切れるというより、パワーを前面に出して伸びてくる。前回のいちょうSは苦しいインに詰まってなかなかスパートできなかったが、ゴール寸前は割って出て、勝ったフラムドグロワールをクビ差まで追い詰めた。
脚はまだあった印象が濃く、苦しい位置から伸びた勝負強さも2戦目の2歳馬とすれば上々だろう。今週もまた、前回と同様に古馬オープン馬を圧倒する追い切りをこなし、迫力満点の伸びをみせた。コディーノ逆転も十分可能と思える。
以下、ムーア騎手を配してきたインプロヴァイズ(父ウォーエンブレム)は、最後の直線「11秒0−11秒2」の高速上がりを、後方から楽々と2馬身半も抜け出したから切れる。新馬戦ではサトノノブレスに約2馬身遅れの3着だったが、上がり33秒2はまったく同じだった。
人気薄のケンブリッジサン(父フサイチホウオーは2006年の勝ち馬)も単なる逃げ切りではなかった。スローで引きつけ、上がりは34秒0でも、最後の2ハロンは「10秒9−11秒5」で4馬身差の独走だった。
以下、兄姉馬が早い時期にみんな走っているダービーフィズ(父ジャングルポケット)、新潟2歳Sのザラストロ、藤沢和厩舎のレッドレイヴンを押さえる。
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柏木集保
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。