2012年12月06日(木) 12:00
逆らわない、もっとも理想的な生き方は水のようなものであるという考え方がある。水に学べと言っているのだ。なぜ水かだが、答えはその性質にある。逆らわないその柔軟性なのだ。入れられる器どおりの形になるところから、相手の出方に応じてどのようにも対応するその特徴に学ぶものが、確かにありそうだ。いかようにも対応する、その能力があれば怖いものはない。
どんな変化にも対応できるという強味、いま組織が求めていることかもしれない。
これを、ひとひねりして、対応するを逆らわないという点だけに特定すると、そこにあるがままの姿が見えてくる。あるがまま、無理に変化させず、じたばたしない。ただひたすらその道を歩み続ける、そんな風だ。事情が許すなら、穏やかに大きな心でそうありたいとは思えないだろうか。
ステイヤーズSに6回も出走した10歳馬トウカイトリックの勝利に、それを見たように思えた。4歳で出走したときにアイポッパーの2着に入り、翌年は1番人気に支持されたこともあった。ダイヤモンドSや阪神大賞典を勝っているぐらいだから、スタミナの生きる展開なれば持ち味が生きるという自負はあったろう。
ひたすら長距離戦でのこういう場面を願って走り続けるうちに10歳になり、ついにつかんだ今度の勝利で、無理に変えずに決めた道を歩んだ姿を見た思いがした。あるがままなのだ。
また、ジャパンCダートのニホンピロアワーズの場合は、酒井学騎手だ。22戦のうち14会騎乗し、9勝のうち7勝が彼によるもの。ただひたすらこの人馬のコンビを見つめ続けた陣営、穏やかに大きな心につつまれてGIタイトルをデビュー15年目でつかんだ騎手。そういう味方も出来たのではないかと思う。
トウカイトリック、ニホンピロアワーズの勝利には、逆らわないという人の生き方のひとつの姿が見えていた。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。