2012年12月15日(土) 12:00
あなたは人前で「ワイルドだろぉ?」と言ったことがあるだろうか。「ある」という人は、このコラムを読んでいる人のなかにはほとんどいないような気がする。私の芸風を好んでくれるような人が、今年の「ユーキャン新語流行語大賞」のトップテンに残った言葉で口に出したことがあるとすれば、一番多いのは「維新」ではないか。この言葉は「平成維新」だとか「自分維新」といったように、ひとり遊びができるからだ。
では、京都の清水寺で発表された「今年の漢字」の第1位が「金」だったということに関して、「なるほど!」と納得した人は……こちらもほとんどいないと思う。
そもそも「金」というのは、私から最も縁遠い言葉である。
世界一の自立式電波塔である東京スカイツリーが開業したり、ロンドン五輪で、日本が史上最多の38個のメダルを獲得したりと、数々の金字塔を打ち立てたから、ということもあって選ばれたという。
今年の日本の競馬界における金字塔というと、どんなことがあるだろう。
やはり、牝馬三冠馬となったジェンティルドンナが、3歳牝馬として初めてジャパンカップを勝ったことだろうか。
ほかでは……そうだ、今週、武豊騎手が朝日杯フューチュリティSを勝てば、前人未到のJRA・GI全制覇という、とてつもない金字塔を打ち立てることになるのか。JRA通算3500勝も近い。
今週末は、武豊騎手を見るために競馬場に行くことにしよう。
それはさておき、本当はその年の重大ニュース(10大ニュース)というのは、大晦日にやるべきなのだろうが、あまり遅くなるとみんなの気持ちが新年に向いてしまい、その手の企画はひどく後ろ向きなものとして敬遠されてしまう。
ということで、現時点での2012年の競馬界と私自身の重大ニュース(10大ニュース)をリストアップしようと思う。なお、競馬界のニュースは日本の人馬に関するものに限定し、内容も順位も、思いっきり主観が入ったものとすることをお断りしておく。
■競馬界 ?オルフェーヴル、凱旋門賞で惜しすぎる2着 ……ゴール前で抜け出したときは圧勝かと思った。
?武豊騎手、2年ぶりにJRA・GI制覇 ……やはり「競馬界の宝」が輝いてこそ、競馬は衆目を魅了する。
?ジェンティルドンナ、牝馬三冠馬になり、さらに3歳牝馬初のジャパンカップ制覇 ……女傑の時代はこれからもつづく。
?ゴールドシップが二冠馬に ……男だって負けていない。
?オルフェ、阪神大賞典で逸走 ……一度止まりかけてから驚異的な追い上げを見せ、「化け物」であることを広く知らしめた。
?福島競馬場で1年半ぶりに競馬開催 ……4月、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故の影響で休止に追い込まれていた競馬が、福島に帰ってきた。
?裁決ルールが2013年から変更となることが発表される ……競馬の形が変わってきそうだ。
?惜しまれるホースマンたちの引退 ……渡辺薫彦騎手、芹沢純一騎手らがまもなく現役を退く。これからも頑張ってほしい。それに先立ち、スタージョッキーだった嶋田功元調教師、私と同い年の坂本勝美元調教師、そしていろいろお世話になった保田一隆元調教師の引退も寂しく感じた。
?ウオッカの初仔、来日 ……体の大きさでも話題に。
?ダイワメジャー旋風、巻き起こる ……ファーストクロップのカレンブラックヒルなどが強さを見せている。
■私の競馬関連 ?JRA賞馬事文化賞受賞 ……『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で。
?グリーンチャンネルでナビゲーター ……この秋、一本30分、全13回で放送されている「日本競馬の夜明け」で。「自分の番組」と言える初めてのもの。
?初めての連載小説 ……このサイトの競馬小説「絆」。あと3回で感動のフィナーレ。
?母入院、父退院 ……それで、ほぼ毎月札幌の実家に来るようになった。数週間滞在することもあり、馬産地ライター並みに北海道にいる。
?今年も相馬野馬追を取材 ……通常どおり開催された野馬追を初めて見て、甲冑競馬の迫力に圧倒された。
?アジア競馬会議出席 ……トルコのイスタンブールへ。勉強になったし、面白かった。
?久々のアメリカ競馬 ……武豊・トレイルブレイザーを追いかけてブリーダーズカップが行われたサンタアニタパーク競馬場へ。シービスケットの映画化に関する渡米以来、8年ぶり。
?ひっそりと愛馬がデビュー ……去年、久々の一口会員に。現在、2歳未勝利(どの馬かは業務上秘密です)。
?スマイルジャック、奮闘 ……京成杯オータムハンデで惜しい2着。首を使ったカッコいいフォームは健在。
?初めての場所からダービー観戦 ……ラジオNIKKEIの競馬中継のゲストとして招かれ、放送席から観戦。横で中野雷太アナの文字どおりの生実況を聴きながら。
といった感じである。 残り2週間ほどとなった2012年で、これらを上回る、いい意味でのサプライズが起きることを期待しながら、競馬を楽しみたい。
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島田明宏
作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。 関連サイト:島田明宏Web事務所