2013年01月24日(木) 12:00
色即是空、空即是色、辿り着いた究極の真理、ひとつの世界観を表したという般若心経262文字の中でも、この部分は耳に残っているのではないか。移ろい続けるこの世の中の現象のひとつひとつは、別々に見えて実は言葉として表せない何かに動かされているのであって、その何かが空なのだそうだ。空の中からあらわれてくる現象、人間がつくり出したかに見えるものの根底にすべて空があるのだから、いつまでたっても空とは何かの思いが強くなるばかりだ。奥は深い。
さらに続けると、物事はその仂らきも存在も様々な条件が重なってそうなる。だから、その条件が変われば結果も変わってくる。そして、その条件は刻々と変化してやむいことがないから、世の中を見極めるのは難しいのだと。この、条件が変われば結果も変わると言えば、日常の競馬がまさにそうではないか。
AJC杯を勝ったダノンバラード、京成杯を勝ったフェイムゲーム、2頭ともアイルランドのフランシス・ベリー騎手のテン乗りだった。JRAの重賞は、AJC杯が17度目の挑戦。最後の直線で内にもたれて他馬の進路を妨害したため、開催日6日間の騎乗停止となってしまった。
競馬にはよくあるテン乗り、これこそ条件が変わるという好例だが、ダノンバラードの勝利が久々だっただけに印象深い。一方のフェイムゲームの場合は、テン乗りに加えて前日のベリー騎手自身のまずいプレイがあっただけに、彼自身発奮するところがあったろう。
さらなる条件の変化は、その心の中にもあった。まさに刻々と変化していたのだ。
2頭とも別の新しい力が作用していたのは確実。それをどう分析するかでこれからの戦い方が見えてくる。もしかしたら、そこにも言葉では表せない何かが、つまり空の中から発せられた力によって生み出されるという仂らきがあるのかもしれない。面白い。
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長岡一也
ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。