ポスト・フリオーソは…

2013年02月01日(金) 18:00

 年明け最初のGI/JpnIとして行われた川崎記念は、ダート中長距離路線の世代交代を感じさせられる一戦となった。そしてあらためてフリオーソの偉大さを思わざるをえないレースともなった。

 昨年は、スマートファルコン、トランセンド、フリオーソら、この路線を盛り上げてきた活躍馬が続々と引退。帝王賞を勝っていよいよ将来が期待されたゴルトブリッツも死んでしまった。昨年ダート路線のGI/JpnIで唯一2勝を挙げたエスポワールシチーこそ現役にとどまったが、川崎記念には登録の段階から名前がなかった。

 レース内容も近年の川崎記念とはまったく異質なもの。これまではヴァーミリアン、フリオーソ、スマートファルコンという中心的な存在の馬たちが緩みのない厳しいペースでレースを引っ張っていたが、今回はそういう存在がいなくなったばかりか、典型的な逃げ馬もいないというメンバー。道中14秒台のラップが2度というのは、過去5年ではなかったことで、勝ちタイムも過去10年に一度もなかった2分15秒台。2100mで行われるようになってからの15年間でも3番目に遅いタイムだった。

 昨年まで6年連続で優勝していた1番人気馬は2着だったが、それでも東京大賞典で上位を争ったJpnI勝ち馬2頭での決着という順当な結果。そして「中央VS地方」ということでは、中央勢の掲示板独占となった。

 とはいえ過去5年はフリオーソがいずれも3着以内に入り、中央と地方が互角に争っているように見えたが、それは「中央VS地方」ではなく、「中央VSフリオーソ」ともいえるもの。仮にフリオーソがいなかったとしたら、中央勢上位独占の間に割って入ったといえるのは、11年に3着だったボランタスのみ。08年はアンパサンドの4着というのがあるが、この年は中央馬が2頭取消して2頭しか出走がなかった。あらためてフリオーソの偉大さを痛感させられる記録だ。

 以前にも指摘したが、今の地方のトップクラスの多くは、中央馬との対戦で勝ち負けにならないなら地方同士の重賞を狙うというパターンが目につき、それゆえ中央との交流重賞に出走している馬より、賞金が高い地方同士の重賞のほうがレベルが高いという、ある意味での逆転現象が起きている。

 たとえば南関東所属馬にしてみれば、交流重賞に出走して、がんばっても掲示板の端のほうがやっとという相手関係なのであれば、1着賞金が1000万〜3000万円ほどもある地方重賞の優勝を狙うほうが現実的ということなのだろう。

 今回の川崎記念に出走した地方馬でも、コンスタントに地方重賞を勝っていて、交流重賞でも入着経験があるのはカキツバタロイヤルのみだった。

 ポスト・フリオーソの地方競馬は、牝馬こそ中央勢と互角に戦える馬が何頭かいるが、牡馬の、特に中長距離路線はかなり厳しいと言わざるをえない。NARグランプリ2012の年度代表馬となったのが、その年にはJpnIIまでしか勝っていない牝馬のラブミーチャンだったということは、その象徴ともいえる。

 牝馬限定戦は別として、今後地方で行われるダート中長距離路線は、いわば「場所貸し」ともいえる状況が続くかもしれない。

 ただここ2〜3年で地方競馬の状況が変わってきたと思えるのが、中央で数多くの馬を所有している大手の個人馬主さん、それも複数の方が、中央でもオープンや準オープンで十分勝負になるレベルの馬を地方に移籍させる傾向にあること。そうしたところから、ダートGI/JpnI戦線でも勝負になる、チャンピオン級の地方馬が現れる可能性はある。

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

斎藤修

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

新着コラム

コラムを探す