2013年02月06日(水) 12:00
1月30日に米国ジョッキークラブから、2012年版のイクスペリメンタル・フリーハンデが発表になった。
査定の対象となるのは、「重賞競走」か「総賞金7万5千ドル以上の準重賞競走」で4着以内に入った2歳馬242頭(牡馬125頭、牝馬117頭)で、彼らがダート8.5Fのハンデ戦に出走したとしたら負担重賞はいくらになるか、をテーマに各馬のハンディキャップを査定したものである。
ワールドサラブレッドランキング欧州2歳部門の北米版に相当するわけだが、1934年の2歳世代から査定を開始したイクスペリメンタル・フリーハンデのほうが、1978年の2歳世代からスタートした欧州版よりも、だいぶ歴史が古いことになる。
牡馬・セン馬の首位は、G1BCジュヴェナイル(D8.5F)など2つのG1を含めて5戦5勝の成績で2歳シーズンを終えたシャンハイボビー(父ハーランズホリデー)で、ハンデは2歳牡馬の首位としては標準値となる126ポンドだった。
デビュー3戦目のG2ホープフルSを3.3/4馬身差で制して重賞初制覇を果し、続くG1シャンパンS(d8F)を5馬身差で圧勝したところまでは、水準よりも上の2歳王者となる資格があり、フリーハンデでも過去20年で4頭いる「126超え」を果す可能性もあったシャンハイボビーだったが、肝心のBCジュヴェナイルがゴール前「あらあら」の競馬で頭差の辛勝。この一戦をもって残念ながら、普通の2歳王者に格下げとなってしまった。
シャンハイボビーは3歳緒戦となった1月26日のG3ホーリーブルS(d8.5F)で、イッツマイラッキーデイ(父ロイヤーロン)の2馬身差2着に敗れて連勝がストップ。さらに評価を下げることになっっている。
第2位は、3ポンド下の123ポンドでヒーズハッドイナフ(父タピット)とヴァイオレンス(父メダグリアドロー)の2頭が横並びとなった。
単勝20.7倍という低評価を覆し、BCジュヴェナイルでシャンハイボビーに頭差まで迫ったのが、ヒーズハッドイナフだ。ところがこの馬も、続くG1キャッシュコールフューチュリティ(AW8.5F)が5着、3歳緒戦となった2月2日にサンタアニタで行われたG2ロバートルイスS(d8.5F)が4頭立ての3着と、その後は連敗を喫して評価を落としている。
一方、デビューから無敗の2連勝でG2ナシュアS(d8F)を制した後、本拠地の東海岸からわざわざ西海岸へ遠征し、なおかつ初めてのオールウェザーに挑んでG1キャッシュコールフューチュリティを制し、3戦3勝で2歳シーズンを終えたのがヴァイオレンスだ。
3代母がチャンピオン牝馬スカイビューティーという名門ファミリーを背景に背負うこの馬を、現段階でのダービー候補ナンバーワンと見る関係者は多い。注目の今季初戦は2月23日にガルフストリームで行われるG2フォンテンオヴユースS(d8.5F)と言われている。
なお2月4日現在で、ダービー出走へ向けた獲得ポイント24点でランキング2位につけ、ヴァイオレンスとともに有力なダービー候補と目されているゴールデンセンツ(父イントゥミスチフ)は、ハンデ116ポンドの18位と、イクスペリメンタル・フリーハンデにおける評価は低いものとなった。10月のG1シャンパンSでシャンハイボビーに5馬身負けたことが、査定に響いたものと思われる。
牡馬の首位シャンハイボビーの評価が標準値だったのと同様、牝馬の首位ビーホールダー(父ヘニーヒューズ)の評価も、ハンデ123ポンドという標準値となった。
2歳7月にデビュー2戦目のメイドン(AW5.5F)で初勝利を挙げると、次走はいきなりG1デルマーデビュータント(AW7F)に挑み、当時戦線の最前線に立っていたエグゼクティヴプリヴィリッジ(父ファーストサムライ)のハナ差2着に好走。
続くサンタアニタの一般戦(d6F)を11馬身差で制して2勝目を挙げると、G1BCジュヴェナイルフィリーズ(d8.5F)でエグゼクティヴプリヴィリッジを1馬身差下して世代の頂点に立った。今季初戦となった1月21日にサンタアニタで行われたG2サンタイネスS(d6.5F)では伏兵レネーズタイタン(父バーンスタイン)の2着に敗れたが、仕上がりが8分程度であったことは明らか。
さらにレース後、咽喉に炎症をもっていたことが判明。調子も万全ではなかったようだ。すでに調教を再開しており、次走は3月2日のG1ラスヴァージネスS(d8F)になると見られる同馬が、依然として3歳牝馬戦線をリードしていると見て良さそうだ。
1ポンド下の122ポンドで牝馬2位にランクされたのが、G1BCジュヴェナイルフィリーズ2着のエグゼクティヴプリヴィリッジである。6月のデビューから10月のG1シャンデリアS(d8.5F)まで5連勝。しかも初ダートだったシャンデリアSで6.1/4馬身差の圧勝を演じた時には、大変な大物登場かと騒がれたものだが、BCで初黒星を喫すると、2歳最終戦となったG1ハリウッドスカーレット(AW8.5F)では4着に敗退。竜頭蛇尾を絵に描いたようなシーズンとなってしまった。
さらに2ポンド下のハンデ120ポンドで横並びの3位となっているのが、フロティラ(父ミズンマスト)とカウアイケイティー(父マリブムーン)の2頭だ。
11月にサンタアニタで行われたG1BCジュヴェナイルフィリーズターフ(芝8F)を制したフランス調教馬フロティラは、地元の3歳クラシックを目標に、現在はシーズンオフの真っ最中だ。
もう1頭のカウアイケイティーは、G1BCジュヴェナイルフィリーズの4着馬である。目下のところ6戦して、敗戦はBC一戦のみ。2歳時既にG2メイトロンS(d6F)、G2アディロンダックS(d6.5F)と2重賞を制していた同馬は、年明けも1月1日にガルフストリームで行われたG3オールドハットS(d6F)、1月26日に同じくガルフストリームで行われたG2フォワードギャルS(d7F)を連勝。2月4日現在で、オークス出走へ向けたオークスポイントを21点獲得し、リーダーボードの首位を独走している。
北米のダービー・オークス戦線は本番まで残り3か月を切り、これからが本格化する季節となる。2月下旬になると、ダービーポイント指定競走もオークスポイント指定競走も、設定ポイントがこれまでの5倍になるだけに、より一層白熱化することは必至だ。両戦線を緻密にフォローして行くことを、netkeibaの読者のみなさまにもお勧めしたいと思う。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。