トーセンラー、京都記念での復活勝利への思い

2013年02月14日(木) 12:00

 物に満ちあふれて満足しているとき。そんなときには、人の情や感謝の気持ちは置き去りにされてしまうもののようだ。世の中、落ちこぼれ、人知れず苦しんでいる者がどれだけいるか。凍える記事の中に、こうした不幸とも思えるものがあまりにも多い。こういうときだからこそ、ほっとする話が胸に染みる。

 なるべく多く、心温まる話しがほしいと思うのだが、競馬の中に見い出せることもある。春のタイトルを目指す瀬踏みの戦いの最中、ここにもぬくもりをもとめる心があった。

 勝ち負け云々するより、どんな競馬をするかを見たかったと語ったトーセンラーの藤原英昭調教師。その勝利で得たものは大きかった。3歳春、きさらぎ賞での圧倒的な勝ちっぷりを覚えている。あの切れ味はディープインパクトの血、そういう期待があった。

 一応、クラシック三冠を戦う能力はあったが、パワー不足で勝てずに年月が流れていた。どうしたのか、安堵する日は来るのか、そうした思いが続き、4歳時は2月から9月まで重賞を7戦して2着2回、3着が1回、あと一歩及ばなかった。

 その後、思い切って休養に入り、5歳になっての初戦がこの京都記念だった。昨年このレースは4着に終わっていたが、今年は馬体がひと回り大きくなり、1年前の同レースより20キロ太っていた。もともと牡馬にしては細身だったのでこれはうれしいこと。

 新馬戦で勝利の手綱を取っていた武豊騎手は、2年ぶりの騎乗だったが、直線半ばで勝利を確信した。大きいところを狙えますと、その乗り味をほめていたが、陣営にとっては、まさにほっとする話。

 今度こそ満ちあふれるほどの満足を得られるかどうかわからないが、低迷期が長かったのだから、その勝利が私どもに ぬくもりを与えてくれたのは確かだった。それと、久しぶりに武豊騎手とのコンビで大舞台に人気を呼ぶシーンが実現するのかという期待を抱けるのがうれしい。無事に得意の京都で飛躍してほしい。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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