2013年02月20日(水) 18:00 11
エンパイアメーカー
サマーバード
先週12日(火)の社台スタリオンステーションを皮切りに、15日(金)には静内地区の3か所で、18日(月)はダーレースタリオンで、そして19日(火)は新冠地区の2か所で、それぞれ種牡馬展示会が開催された。15日(金)は、まずJBBA静内種馬場が9時半より展示会を開始した。この日は朝のうちよく晴れており、静内種馬場には日高各地から多くの生産者及び関係者が集まり、展示された12頭の種牡馬に熱い視線を送っていた。
JBBAの今年の目玉は、超人気のエンパイアメーカーとともに、今年より供用開始となるサマーバード。同馬は2009年のベルモントS勝馬で、G1・3勝を含め9戦4勝の成績を残し、2011年より米国にて種牡馬入りした。昨秋、日本に輸入されることになり、今回生産者に初めてのお披露目となったのである。
種付け料は基本契約(不受胎時種付け料返還、フリーリターン特約つき)で150万円と手ごろな価格に設定されていることから、すでに配合予定の158頭は「満口」だ。
JBBAはエンパイアメーカーに人気が一極集中しており、その他は昨年いずれも交配頭数が伸び悩んだ。そのために今年度は種付け料を値下げする種牡馬が多く、基本契約ではヨハネスブルグが250万円→150万円、バゴが180万円→150万円、アルデバランが160万円→100万円、ケイムホームが100万円→80万円と、より手の届きやすい価格設定になった。その代わり、主力のエンパイアメーカーは250万円→350万円に値上げとなり、この馬に関してはフリーリターン特約がなくなった。
JBBA静内種馬場の繋養種牡馬は全部で12頭。一昨年から昨年にかけて交配頭数が大きく減少したこともあり、今年は巻き返しを図りたいところだ。
アロースタッドの展示風景
マツリダゴッホ
JBBAの次にアロースタッドの展示会が10時20分に予定されていた。静内地区の3か所は時間差を設けており、最後のレックススタッドで11時30分である。しかし、関係者は全員例外なく車で来場するため、指呼の距離にあるJBBA静内種馬場からアロースタッドまでの移動に結構な時間を要した。いくぶん数は減ったものの、JBBAからアロースタッドへ大半の関係者がそのまま移動した。
アロースタッドではスズカコーズウェイ、ヒルノダムール、リーチザクラウン、トランセンド、キタサンカムイデンの5頭が新たに加わりお披露目された。またゼンノエルシドは再入厩である。リーチザクラウンの展示には西山茂行オーナーも駆けつけ、「私はこの馬を途中から持ったためにいい思いをしていません。ですからぜひ子供で楽しみたいと思います」と挨拶し、多くの交配を呼びかけていた。アロースタッドでは、シリアルナンバー入りの案内状を生産者の元に送っており、展示会の終わりには豪華景品が当たる抽選会も行なわれた。
アロースタッドの繋養種牡馬は、全26頭。老雄ブライアンズタイムを筆頭に、サウスヴィグラス、ワイルドラッシュなど実績のある種牡馬も多く、またミスキャストは周知の通り昨年春の天皇賞馬ビートブラックを輩出している。
この日の最後はレックススタッドの展示会。JBBA→アロースタッド→レックススタッドと場所を移動して行くうちに、少しずつ集まる人々の数は減って行ったが、ここでは展示会に先立ち、参加者に豚汁が振舞われた。
スクリーンヒーローが最初に登場し、スリーロールス、マツリダゴッホ、エイシンデピュティと続き、次に新種牡馬のエイシンアポロンが紹介された。また、新たに入厩したスペシャルウィークやローエングリン、ホワイトマズル、アドマイヤコジーンなどの“旧社台系種牡馬”も次々に展示された。最後はティンバーカントリー。24頭の繋養種牡馬のうち22頭がお披露目され、展示会が終了した。
静内地区3か所の種馬場には合計62頭の種牡馬が繋養されているが、漸減し続ける交配繁殖牝馬数のあおりを受けて、どの種馬場も牝馬の確保に躍起になっている印象だ。できるだけ配合しやすいように条件を緩和する配慮も浸透しつつあり、例えばここレックスでは、産駒の性別によって種付け料を半額に値引きする種牡馬もいる。
もちろん生産者にとって種付け料の捻出はいつも頭の痛い問題で、マーケットブリーダーである以上、まずは売ることを優先させなければならず、そのためには期待の繁殖牝馬ほどそれに見合ったレベルの種牡馬を配合することになる。理想は種付け料の安い種牡馬を配合し、出生した産駒を高く売る「海老で鯛を釣る」ようなやり方だが、現実的にはかなり難しい。
18日のダーレースタリオン、19日のビッグレッドファームでの展示会についてはまた次週に。
田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。