2013年03月30日(土) 18:00
5歳になったオルフェーヴルが始動する。今年は、昨年ほぼ掌中にしながら、寸前に歴史的な勝利を逃してしまった凱旋門賞に再挑戦しなくてはいけない。ジェンティルドンナや、ゴールドシップとも、チャンピオンの座をかけて対決しなければならない。でも、クリアしなければならない課題は、意外にいっぱいあるのである。
まず、父に7歳までタフに挑戦し続けたステイゴールドを持ち、母の父は6歳までチャンピオンだったメジロマックイーン。オルフェーヴルが完成されるのは5歳の今年であってまったく不思議はないのだが、3冠馬にはここまでに心身両面で、並みの馬とは異なる快走を連続させた 大きな負担の積み重ねがある。3冠馬が5歳以降も何回も走ろうとするのは珍しいことで、過去の3冠馬6頭のうち、5歳以降も出走したのは半数の3頭だけ。その成績は3頭合わせて[1-2-0-3]という大変な記録が残っている。栄光のチャンピオンは、決して不滅ではない。それどころか、打ち倒されて引退を余儀なくされてきたのが、長く活躍しようとしたチャンピオンの定めなのである。オルフェーヴルにもやがて陰りは訪れる。それは、いつなのだろうか。
オルフェーヴルは4歳後半から、ムチを受け入れない馬になっている。鞍上が変な動きや、余計なアクションをすると、振り落とした。余計なムチを入れると、斜行もした。オルフェーヴルぐらいになると、プライドを傷つけるような動きを極度に嫌うのだろう。また、変に慣れ慣れしくすり寄ってくる人間は、本能的にあまり好きではない。池添騎手はオルフェーヴルの、天才のプライドを尊重し黒子に徹することができるだろうか。
今回の組み合わせだと、緩い流れは避けられない。超スローもありえる。またいつかのように、かかって行きたがる危険なしともいえない。凱旋門賞を考えると、行かせてしまうことは許されていない。折り合いは大丈夫だろうか。
そんな心配しながらも、オルフェーヴル には今年こそ、世界にその名を知らしめる偉業を達成して欲しいが、昨年より精神的に穏やかになることはあっても、さらに強くなる可能性はないだろう。生命体の宿命である・・・
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柏木集保
1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。