女性騎手が史上初のケンタッキーダービー制覇となるか

2013年04月24日(水) 12:00

 4月20日にキーンランドで行われたG3レキシントンS(d8.5F)をもって、5月4日にチャーチルダウンズで行われるG1ケンタッキーダービー(d10F)に向けた主要な前哨戦が終了。第139代ケンタッキーダービー馬となることを目指す馬たちの勢力分布が、ほぼ固まった。

 当日1番人気が予想されるのが、ヴェラザノ(牡3、父モアザンレディー)だ。

 祖母シックシリーンがG1アッシュランドS勝ち馬という血統背景を持つヴェラザノは、キーンランド・セプテンバーセールにて25万ドルで購買され、T・プレッチャー厩舎に入厩。デビューは今年の1月1日で、ガルフストリームパークのメイドン(d6.5F)を7.3/4馬身差で快勝。この馬は関係者やファンの耳目をおおいに集めるきっかけとなったのが2戦目で、2月2日に初戦と同じガルフストリームパークで行われた条件戦(d8F)に駒を進めたヴェラザノは、ここをなんと16.1/4馬身差で圧勝。直後に催されたケンタッキーダービーの第1回前売りで、重賞未出走の分際ながら個別の馬としては1番人気に祭り上げられることになった。

 その後も、3月9日のG2タンパベイダービー(d8.5F)で重賞初制覇を果し、前走4月6日にアケダクトで行われたG1ウッドメモリアルS(d9F)でG1初制覇と、順調に出世の階段を登ってきたヴェラザノ。先週のこのコラムでもお伝えしたように、他にも有力馬がいたJ・ヴェラスケスがこの馬に乗ることを決めたため、当日の1番人気がほぼ確実なものとなった。

 3歳デビューの馬がケンタッキーダービーを勝てば、1882年のアポロ以来131年振り史上2頭目の快挙となる。

 2番人気が予想されるのが、J・ヴェラスケスに代ってJ・ロザリオが手綱をとることになったオーブ(牡3、父マリブムーン)である。

 フィップス・ステーブルとS・ジャニー氏による自家生産馬オーブ。昨年の8月にサラトガでデビューしたが、勝ち切れない競馬が続き、ようやく初勝利を手にしたのはデビュー4戦目となった、11月にアケダクトで行われたメイドン(d8F)だった。ところが、初勝利をきっかけに馬が一変。続くガルフストリームパークの条件戦(d9F)も連勝すると、2月23日に同じくガルフストリームパークで行われたG2フォンテンオヴユースS(d8.5F)で重賞初挑戦初制覇を達成。更に3月30日にガルフストリームパークで行われたG1フロリダダービー(d9F)も快勝と、破竹の4連勝でKYダービーに挑むことになった。

 管理するC・マゲイヒイ調教師(62歳)は、既に殿堂入りも果している伯楽だが、ケンタッキーダービーに関して言えば、89年にイージーゴーアーで2着となったのが最高着順だ。マゲイヒイ師にとって悲願のダービー初制覇がなるかどうかは、今年の大きな見どころの1つと言えそうだ。

 西海岸を代表する存在としてケンタッキーダービーに挑むのが、アイルハヴアナザーで制した昨年に続く連覇を狙うD・オニール調教師が管理するゴールデンセンツ(牡3、父イントゥミスチフ)である。

 OBSジューンセールという一流とは言い難い市場で、6万2千ドルで購買された同馬。昨年9月にデルマーのメイドン(AW5.5F)でデビュー勝ちを飾ると、次走は東海岸に遠征してベルモントパークのG1シャンパンS(d8F)に挑み、2歳チャンピオンとなるシャンハイボビーの2着に好走。その後、G3デルタジャックポットS(d8.5F)、G3シャムS(d8F)を連勝し、西海岸における3歳世代の最前線に躍り出た。

 続くG2サンフェリペS(d8.5F)で4着に敗退して下がった株が、4月6日のG1サンタアニタダービー(d9F)快勝で再浮上。この馬が勝てばD・オニール師は、98年(シルヴァーチャーム)と99年(リアルクワイエット)に達成したB・バファート師以来14年振り7度目となる、調教師によるケンタッキーダービー連覇を成し遂げることになる

 本命馬ヴェラザノを擁するT・プレッチャー陣営には、二の矢、三の矢が用意されている。

 1頭は、自身4度目のケンタッキーダービー制覇を狙うC・ボレルの騎乗が決まったレヴォリューショナリー(牡3、父ウォーパス)だ。

 OBSマーチセールにて32万5千ドルで購買された同馬。この馬もオーブ同様、初勝利を挙げるまで4戦を要したが、12月28日にアケダクトで行われたメイドン(d8F)を8.1/2馬身差で制すると、それまでとは馬が一変。今季初戦となったアケダクトのG3ウィザースS(d8F)で重賞初挑戦初制覇を果すと、3月30日のG2ルイジアナダービー(d9F)も快勝。3連勝でダービーに駒を進めることになった。

 プレッチャー厩舎第3の矢は、R・ベハラーノが手綱をとるオーヴァーアナライズ(牡3、父ディキシーユニオン)だ。

 キーンランドセプテンバーにて38万ドルで購買された同馬。昨年8月にサラトガのメイドン(d5F)でデビュー勝ちを果すと、次走のG2ホープフルS(d7F)では4着に敗れたものの、続くG2フューチュリティS(d6F)で重賞初制覇。チャーチルダウンズのG3イロコイS(d8F)3着後、東海岸の出世レースと言われるアケダクトのG2レムゼンS(d9f)を制して2歳シーズンを終えている。

 今季初戦となったアケダクトのG2ゴーサムS(d8.5F)5着後、4月13日にオークローンパークで行われたG1アーカンソーダービー(d9F)を4.1/4馬身差で制し、G1初制覇を果してケンタッキーダービーに臨むことになった。

 話題という点で注目を集めているのが、3月30日のG2ルイジアナダービーでレヴォリューショナリーの2着に入ったマイルート(牡3、父ミッドナイトルート)だ。ケンタッキーダービーにおける鞍上に、女性騎手ロージー・ナプラヴニクが指名されたのである。同馬が昨年12月に、フェアグラウンズの条件戦(d8F70y)を10.3/4馬身差で圧勝した時に手綱をとっていたのがナプラヴニクで、相性の良さを買われての起用となったものだ。

 昨年、ビリーヴユーキャンに騎乗し、女性騎手としては史上初めてとなるG1ケンタッキーオークス制覇を成し遂げたナプラヴニク。ケンタッキーダービーは、パンツオンファイアの手綱をとった2011年に続く2度目の騎乗となる。

 勝てば、女性騎手として史上初のケンタッキーダービー制覇という偉業が達成されることになる。 

 この他、4月13日にキーンランドで行われたG1ブルーグラスS(AW9F)を強烈な末脚で制したジャヴァズウォー(牡3、父ウォーパス)、G1ウッドメモリアルSの2・3着馬ノルマンディーインヴェイション(牡3、父タピット)とヴァイジャック(騸3、父イントゥミスチフ)、G1フロリダダービー2着馬イッツマイラッキーデイ(牡3、父ロイヤーロン)らが出走を予定している今年のケンタッキーダービーは、フルゲート20頭の少なくとも半数が「脈あり」の出走馬という、大混戦模様と言えそうである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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