2013年04月24日(水) 18:00
今年もBTCの育成調教技術者養成研修に新たな顔ぶれが集まった。4月10日(水)、第31期生21名が開講式に臨み、これから来春までの1年間、ここで育成牧場の即戦力となるべく騎乗技術を中心に訓練を重ねる。
BTC開講式
21名中、北海道出身者は3名。最も遠い研修生は広島県である。大阪府2名、京都府2名、滋賀県2名、兵庫県1名と関西出身者も多い。
北海道出身者3名のうち2名はともに帯広農業高校出身で、馬術部に在籍していた経験者だという。とはいえ、こうした乗馬経験を持つ研修生は少数派で、多くは乗ったことはもちろん、まともに触ったことすらない若者たちだ。
期待と不安が同居する落ち着かない様子で開講式に臨んだ彼らは、さっそく翌日から研修を開始した。
BTC修了式騎乗供覧の様子1
BTC修了式騎乗供覧の様子2
見違えるように逞しくなった彼らは、この日、まず午前10時半よりBTC北にある800mダートコースにて騎乗供覧を行ない、1年間の成果を保護者や受け入れ先(就職先)の牧場関係者などに披露した。
2班に分かれて馬場入りした彼らは、あいにく降り出した雨の中を元気良く常歩から速歩、そしてキャンターへとペースアップし、最後はハロン20秒程度まで速度を上げて2頭併走で馬場を周回した。
ちょうどその場に入講したばかりの31期生が、先輩たちの騎乗姿をじっと見つめており、どの顔も「自分は1年後あんなに上手に乗れるようになるのだろうか?」と言いたげな表情を浮かべているのが印象的だ。まだ体になじまないヘルメットや紺の作業衣など、毎年この対比はまさしく「ビフォーアフター」なのである。
おそらく、これまで誰もが自分の今後についてぼんやりとした不安感を抱きながらこの1期先輩の騎乗供覧を見学していたと思われるが、1年後は、みんな晴れ晴れとした表情で修了式を迎える。厳しい訓練を終えた安堵感や達成感が、「それなりに見られる姿」に若者を変えてしまうのである。
騎乗供覧の後、11時半より修了式が行われ、伊藤克己・BTC理事長より1人ずつ修了証書とゼッケン(騎乗供覧に使用したもの)が記念として授与された。
30期生を代表して荒井康之さんが謝辞を述べ、12時に閉会した。荒井さんは30歳。妻子を千葉に残して単身北海道に渡り、ここの研修生となった。まさしく背水の陣で1年間訓練を重ね、今春より千葉(香取市)にあるエスティファームに就職する。「(1年間の訓練を終えて)とにかくホッとしています。まだまだこれから大変ですが、頑張って働きたいですね」と荒井さんは語るのであった。
荒井君に修了証書授与
BTCの30期生
ところで、開講式(入学式)と修了式(卒業式)が、ここでは普通の学校とは異なり逆になっている。今年も9日間ほど研修生が重複する期間があったわけだが、この間に先輩から後輩へ、作業の手順や方法について指導が行われる。まず44頭在籍している訓練馬の世話から始まるのがこの研修制度である。近々、騎乗訓練が始まった頃を見計らってまた見学してくるつもりでいる。
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田中哲実
岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。