歩み続けるという運命

2013年04月25日(木) 12:00 9

 自分には自分に与えられた道がある。自分だけしか歩めない、しかも二度と歩めない道が。もしそれが思案にあまる道であっても、とにかく歩まねばならない。心を定め、ひたすらに。そうして休まず歩むことで新しい道がひらけてくる。先人たちは、こうして大きな喜びをつかんできたのだ。あきらめるなとの強いメッセージである。

 たとえ遠い道であっても、歩き続けるという運命にあると観念した方がいいような気がするのだが、どうだろう。

 トライアルから本番という道も、ある馬にとっては天与の道かもしれない。その選択は人間に委ねられているが、その命を受ける馬は、ひたすらそれに従うしかない。その有り様を見て、私どもは、その馬が歩む道を極めるかどうか判定しているのだ。

 フローラステークスを勝ったデニムアンドルビーに、多くの人が注目していた。カイ食いが細く、デビューが今年の2月と遅れ、3戦目の前走に勝ったばかりのこの馬を、一番人気に支持したのだから、どこか運命的なものを感じた。スタミナと底力、東京向きの脚質と、見えないところに可能性を見い出すのも競馬だが、フローラステークスは特にその色彩の濃いレースだから、こうなっても不思議ではなかった。

 ところが最後方から行く姿にいささか動揺もあったのではないか。馬に負担をかけないようにと内田騎手は考えたと言っていたが、これこそ正にデニムアンドルビーにとっての天与の道、本番での戦い方も予見できるものだった。こうすることで本領を発揮する、駄目なら仕方ない、また別の道を探ればいいではないか。

 トライアルで本番の戦い方をつかめたらこれ以上のことはない。迷わなくていいのだから。いま見えている道を歩くことが、かけがえのないことと心に決めて、いざ本番のオークスで潔く結果を受け入れるだけだ。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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