2013年英国2000ギニー・1000ギニー展望

2013年05月01日(水) 12:00

 英国における3歳クラシックの幕開けとなるG1・2000ギニーとG1・1000ギニーの開催が、今週末に迫っている。今回のコラムは、その見どころを御紹介したい。

 まずは4日(土曜日)にニューマーケットで行われる牡馬のG1・2000ギニー(芝8F)。

 ブックメーカー各社が2.0〜2.375倍の1番人気に推しているのが、昨年の欧州2歳王者ドーンアプローチ(牡3、父ニューアプローチ)である。

 管理するジム・ボルジャー調教師の生産馬で、昨年3月25日に調教師夫人の所有馬としてデビュー。カラのメイドン(芝5F)、ナースの一般戦(芝6F)、ナースのロチェスタウンS(LR、芝6F)、ロイヤルアスコットのG2コヴェントリーS(芝6F)と4連勝を飾った段階で、権利の半分以上をゴドルフィンが収得。夏休みを挟んで、カラのG1ヴィンセントオヴライエンS(芝7F)、ニューマーケットのG1デューハーストS(芝7F)も白星で通過し、6戦6勝の成績で2歳シーズンを終えた同馬は、ワールドサラブレッドランキング欧州2歳部門で断然の首位に立つとともに、カルティエ賞2歳牡馬チャンピオンに選出されている。

 ここが今季初出走となるドーンアプローチ。今年の欧州は冬が大変厳しいかったため、仕上がり具合が気になるところだが、ボルジャー師によると1日も休むことなく乗りこんだとのことで、能力を充分に発揮出来る状態での出走となりそうだ。そうであるならば、2歳時のパフォーマンスが1頭だけ抜けているこの馬が、1番人気になるのも当然と言えそうである。

 各社3.5倍前後のオッズを掲げて横並びで2番人気に推しているのが、こちらもここまで無敗で来ているトロナード(牡3、父ハイチャパラル)である。

 叔父にG1レイシングポストトロフィー(芝8F)勝ち馬カサメントがいるという血統背景を持つトロナードは、アルカナドーヴィルセールにて5万5千ユーロで購買され、リチャード・ハノン厩舎に入厩。ニューバリーのメイドン(芝7F)、アスコットの準重賞(芝7F)、ドンカスターのG2シャンパンS(芝7F)と3連勝して2歳シーズンを終了。この段階で、カタールの王族シェイク・ジョアン・ビン・ハマド・アルターニが購買。新たな馬主の服色を背に登場したのが、4月18日にニューマーケットで行われたG3クレイヴンS(芝8F)で、先手をとった同馬は勝負どころで2弾目のロケットに点火して他馬を圧倒。4馬身差の勝利を収めてデビュー4連勝を飾り、2000ギニーに向かうことになった。

 シーズンオフの間、2000ギニーの前売りはドーンアプローチの独壇場だったが、前哨戦でこの馬が非常に良い勝ち方をしたことで、1強状態から2強状態に情勢が変わることになった。

 上位2頭とはいささか隔たりのあるオッズ(8〜10倍)で、3番手グループを形成するのが、愛国のトップトレーナー、エイダン・オブライエンが管理する2頭だ。そしてこの2頭はいずれも、冬を順調に過ごしたことで、ここへきて前売りでの評価が上がって来た馬たちである。

 1頭は、昨年7月にダンドークのメイドン(AW7F)でデビュー勝ちしたのが唯一の実戦経験というマーズ(牡3、父ガリレオ)だ。半姉にG1伊グランクリテリム(芝1600m)勝ち馬ナイヤーラがいて、祖母がG1仏オークス馬ラファーという良血馬で、オブライエン師が素質を高く評価している馬である。

 もう1頭は、母が北米G3ヴィクトリーライドS(d6F)勝ち馬ラトヴィアータで、半兄にG1ミドルパークS(芝6F)勝ち馬クルセイドがいるという血統背景を持つクリストフォロコロンボ(牡3、父ヘンリーザナヴィゲイター)だ。2歳時は5戦して勝ち星は1つだけだったが、G2レイルウェイS(芝6F)2着、G2コヴェントリーS(芝6F)3着、G1ミドルパークS(芝6F)4着と、強敵相手に堅実な戦績を残した馬である。

         ◇

 今年、記念すべき200回目の施行を迎えるのが、2000ギニーの翌日(5日、日曜日)に同じくニューマーケットで行われる、牝馬クラシック第一弾のG1・1000ギニー(芝8F)だ。

 ブックメーカー各社が3.5〜3.75倍のオッズで1番人気に推しているのが、昨年限りで引退した史上最強馬フランケルと、馬主、生産者、調教師、騎手、厩務員が全て同じというホットスナップ(牝3、父ピオヴォタル)である。

 半姉にG1・6勝の名牝ミッデイ、叔母にG1英オークス(芝12F10y)勝ち馬リームズオヴヴァース、叔父にG1エクリプスSやG1愛チャンピオンSを制したエルマムールがいるという超良血馬ホットスナップは、昨年9月にケンプトンのメイドン(AW8F)でデビュー勝ち。シーズンオフを挟み、4月17日にニューマーケットで行われた前哨戦G3ネルグウィンS(芝7F)に登場すると、前半最後方から目の覚めるような末脚を繰り出して快勝。実績あるチームが手掛ける超良血馬が前哨戦を鮮やかに制したことで、前売り市場でも一気に最前線に躍り出ることになった。

 各社5.5〜6.0倍のオッズを掲げて2番人気に推しているのも、ここまで無敗で来ているジャストザジャッジ(牝3、父ロウマン)だ。祖母が重賞2勝馬で、叔母にG1英オークス(芝12F10y)3着馬ハイヒールドがいるという血統背景を持つ同馬は、ゴフスオービーセールにて5万ユーロで購買され、チャールズ・ヒルズ厩舎に入厩。昨年6月にデビューし、ニューバリーのメイドン(芝7F)と、同じくニューバリーのLRワシントンシンガーS(芝7F)を連勝。この段階で、カタールの王族シェイク・ファハドが主宰するカタール・レーシング・リミテッドが権利の半ばを購買。新たな馬主の服色を背負って走ったニューマーケットのG2ロックフェルS(芝7F)も快勝し、3戦3勝の成績で2歳シーズンを終えることになった。

 ここが今季初登場となるが、4月10日(水曜日)の追い切りで抜群の動きを披露し、前売り戦線での評価が急上昇することになった。

 5.5〜6.5倍という差の無いオッズで3番手評価となっているのが、仏国調教馬ホワットアネイム(牝3、父ミスターグリーリー)だ。

 半兄に、重賞勝ち馬で、G1カーターH(d7F)2着、G1フランクデフランシスメモリアルダッシュ(d6F)2着といった実績を残したダイアボリカルがいて、祖母G1イエローリボンS勝ち馬プレンティオヴグレイスがいるという血統背景を持つ同馬。1歳秋に上場されたゴフスオービーでは主取りに終わったが、2歳春に上場されたキーンランドエイプリルセールでは35万ドルで購買され、仏国のミケル・デルザングル厩舎に入厩。デビュー2戦目のドーヴィルの条件戦(芝1400m)で初勝利を挙げると、次走はロンシャンのG3ラロシェット賞(芝1400m)に挑み、牡馬を相手にしながら見事に勝利を収めて重賞初制覇。次走も牡馬を相手にロンシャンのG1ジャンルクラガルデル賞(芝1400m)を走り、オリンピックグローリーの2着に健闘して2歳シーズンを終えている。

 同馬の今季初戦となったのが、4月4日にメゾンラフィットで行われたG3アンプルダンス賞(芝1400m)で、ここできっちりと2度目の重賞制覇を果したホワットアネイムは、地元仏国の1000ギニーではなく、勇躍英国の1000ギニーに挑むことになった。

 各社7.5〜8倍のオッズを掲げて4番手評価となっているのが、エイダン・オブライエン厩舎のモス(牝3、父ガリレオ)だ。

 2歳時は2戦して未勝利に終わった後、今季初戦となった4月7日にカラで行われたメイドン(芝7F)で、強烈な末脚を繰り出して4.1/2馬身差の快勝。ようやく初勝利を挙げたばかりの馬である。

 実はこの馬、1000ギニーの登録はなかったのだが、4月29日のエントリーステージで3万ポンドの追加登録料を払って出走に踏み切ったあたりに、陣営のこの馬にかける期待の大きさが窺える。

 今週末のニューマーケットに、皆様もぜひご注目いただきたい。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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