3強から4強時代へ突入

2013年05月02日(木) 12:00 12

 それぞれの適正のなかで本領を生かしているのが大自然のすがたで、それだからこそ大きな調和が生まれている。このことは、完全無欠をのぞむ人間のこころは、みずからの悩みを深めるだけで幸福にはなれないと述べているようなものだ。抱く理想は完全無欠なのだが、本来それが有り得ないものなのだから、いくら求めても無理。せめて精一杯本領を生かすことを心がけるのがいい。素直にそう理解できたら、気持にゆとりが生まれ、たがいに足らざるところを補い合う空気が生まれてくるのだが。草は草、木は木という自然のすがたを人間社会に見つけるのは簡単なことではない。

 だからということでもないが、競馬に完全無欠をもとめるこころは強いようだ。威圧感を増した芦毛の馬体は走る姿も自信満々、まだまだ強くなる成長過程にあるとまで言わせたゴールドシップ。どんなペースになろうとも、自ら動いて行って相手をねじ伏せる勝ち方から、死角を考える必要のない王者を見ていた私たち。それがそうではない現実に、普段の自分に突き戻された思いだった。ゴールドシップにある本領とはなにか。ここでももう一度考えてみることになった。戴冠したフェノーメノ。一心不乱に動きこれで来られたら仕方ないという覚悟が自らの本領を生かすかたちとなったのだ。勝てる力はあるという強い思い、しかし気負うことなく構えられたのが幸運を呼んだ。ダービー2着、もう少しで「無冠の帝王」と呼ばれるところだったが、ありがたくない異名返上に至った。

 どういう戦いになるかでそれぞれの本領が生かされる、それがあるのが競馬の面白みで、あまりにも完全無欠をもとめすぎると、それを忘れてしまう。

 これで3強から4強時代に入っていくことになる。どう自らの本領を生かせる戦いに持ち込むかの凌ぎ合いが待っている。

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長岡一也

ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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