2003年06月29日(日) 16:57
6月21日にハリウッドパークで行われたG1ヴァニティHを快勝し、昨年3月以来継続している連勝記録を10に伸ばしたアゼリ。次のターゲットとして、次の3レースが選択肢に挙がっている。 ・8月2日サラトガホイットニーH (G1・9F) ・8月3日デルマーサンディエゴH (G2・8.5F) ・8月10日デルマークレメントハーシュH (G2・8.5F) 最初の2つのどちらかを選べば、アゼリにとって初の、ファンにとっては待望の、牡馬との対戦が実現することになる。一方、最後の1つは、昨年もアゼリが制している牝馬限定戦である。
ここで陣営が次走に牝馬限定戦を選ぶようだと、アゼリが来年も現役ということにでもならない限り、牡馬との対戦は実現しないかもしれない。なぜなら、ここでクレメントハーシュHをを選択するということは、明らかに陣営の狙いが牝馬の連勝記録にあることを意味するからだ。
戦後のアメリカにおける牝馬の連勝記録は、1986年から88年にかけてパーソナルエンサインが作った13連勝。クレメンスハーシュHの後もアゼリが昨年と同じローテーションをとるとしたら、10月のレディーズシークレットHを経由して、地元サンタアニタで行われるBCディスタフで、パーソナルエンサインの持つ『13連勝』に肩を並べることになる。BCディスタフ連覇に華を添える記録達成となれば、これはこれで稀に見る快挙だし、大きな喝采を浴びることは間違いない。
だが、伝説に名を残す存在になるためには、このローテーションではやはり物足りないのだ。なぜなら、パーソナルエンサインの13連勝には,牡馬と走って勝ったG1ホイットニーHが含まれているから。88年、パーソナルエンサインが挑んだG1ホイットニーHは、わずか3頭立て。相手はここが適性距離とは言いがたかったガルチらだったから、楽なレースであったことは間違いない。だがそれでも、牡馬を破ったG1を含めた13連勝と、牝馬を相手にしただけの13連勝では、その価値がまるで違ってくると思うのだ。
サラトガのホイットニーHは、1986年にも牝馬のレディーズシークレットが勝って、この年牝馬ながら年度代表馬に選出される決め手となったレースだ。
昨年、レディーズシークレット以来の牝馬による年度代表馬となったアゼリ。偉大な先輩たちの作った伝統を継承するためにも、ここはぜひホイットニーHに向ってほしいと思うのだが。
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合田直弘
1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。