週刊サラブレッドレーシングポスト

2003年07月14日(月) 15:53

 3年前のセールからホークウィング、2年前のセールからヴィンディケーションと、毎年超大物を輩出している伝統の『ファシグティプトン・サラトガ・イヤリングセール』が、今年も8月5日から7日の3日間にわたって開催される。今年も、エーピーインディ、ダンジグ、デピューティミニスター、エルプラド、ゴーンウェスト、キングマンボ、シアトルスルー、ストームキャット、アンブライドルズソングといったリーディングサイヤーたちの産駒に加えて、今年のイヤリングが初年度産駒となるフサイチペガサス、ジャイアンツコウズウェイら話題の新種牡馬の産駒も出揃った、充実のカタログが完成している。

 大物という意味では、一昨年のこのセールで215万ドルで購買され、昨年の全米2歳牡馬チャンピオンとなったヴィンディケーションの弟(上場番号#107)が、最大の注目だろう。父がシアトルスルーだった兄から、本馬は父がシアトルスルーの代表産駒の1頭エーピーインディに変わっている。つまり、昨年のBCジュヴェナイル勝馬の3/4弟にあたるのが、本年の上場馬である。上場番号72番の父マリアズモンの牝馬は、一昨年のケンタッキーダービー馬モナーコスの妹。父も兄と同じ全妹にあたる。兄はフロリダの2歳トレーニングセールで17万ドルというお値打ち価格で購買されたが、将来の繁殖牝馬としての価値を考えると、本馬は兄の何倍もの値段になることが予想される。

 ファンにとっては、今年の3歳3冠路線を彩った馬たちの弟妹が上場されるのも楽しみ。上場番号129番は、今年のベルモントS2着馬テンモーストウォンテッドの半弟(父リアルクワイエット)。上場番号217番は、今年のケンタッキーダービー3 着馬ピースルールズの半妹(父フォレストワイルドキャット)にあたる。

 この他、01年・02年とアスコットGC連覇を果たしたロイヤルレベルの半弟(#209、父ザフォニック)、G1ジョンAモリスH勝馬リンクリヴァーの半妹(#168、父フォレストリー)、G1マザーグースS勝馬ノンサッチベイの全弟(#154、父ミスターグリーリー)、昨年12月のG1ラブレアSの勝馬ゴットココの半妹(#146、父マーケトリー)、ハリウッドオークスなどG1・2勝のファウダの半妹(#140、父フォレストリー)、G1フューチュリティS勝馬バーニングローマの半妹(#132、父レモンドロップキッド)、プリークネスS勝馬プレイリーバイユー(#131、父レモンドロップキッド)の半弟、99年のBCスプリントをトラックレコードタイで制したアータックスの半妹(#67、父セイントバラード)、G1ヘムステッドS勝馬シスターアクトの半弟(#22、父キャットシーフ)、G1ピムリコスペシャル勝馬インクルードの全妹(#2、父ブロードブラッシュ)など、活躍馬の弟妹は多い。

 母が大物という点では、上場番号13番の父ストームキャットの牝馬が筆頭だろう。母は、BCディスタフ等を制したチャンピオン牝馬ジュエルプリンセスだ。母がテストSなどG1・2勝のツイストアフリートという牡馬(#124、父オウサムアゲイン)、母がメイトロンSなどG1・2勝のオーヴァーオールという牝馬(#58、父スティーヴンゴットイーヴン)、母がG1ラスヴァージネスS勝馬ライクアブルスタイルという牝馬(#27、父エーピーインディ)らにも、購買者の熱い視線が集まるはずだ。

 カタログには、日本における活躍馬の弟や妹も含まれている。上場番号#53の父サザンヘイローの牝馬は、今年1月の白梅賞でネオユニヴァースと首差の接戦を演じたハッピートゥモローの半妹だ。本馬は母ノーザンエメラルドがG1フラワーボウル招待H勝馬という良血馬である。上場番号#21の父アンブライドルズソングの牡馬は、クリスタルC3着馬タイキジリオンの半弟。こちらも、母ラゲリエールがG1クイーンエリザエス2世C勝馬という、活気ある牝系の出である。

 最後に、日本向きの大物という意味でぜひ御紹介したいのが、上場番号#186の牡馬。母がG1モンマスオークス勝馬ドリームディール、姉がスピンスターSなどG1・3勝のクリアマンデイト、同じく姉にトゥザビクトリー、サイレントディールらの母となっているフェアリードールがいるという牝系に、父がヘイロー系のセイントバラード。決して安い買い物にはならないだろうが、日本人に購買されて日本で走るところが見たい馬である。

 サラトガでは、セール初日の前日は、セールと同じハンフリー・フィニー・パビリオンで今年の競馬殿堂入り伝達式。更にその2日前の8月2日には、好メンバーの出走が予想されるG1ホイットニーHが組まれている。競馬ファンなら、夏休みかたがた訪れるのにちょうど良いのが、8月第一週のサラトガである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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