週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2003年07月22日(火) 15:25

 先週の「ファシグティプトン・サラトガ・イヤリング」に続いて、今週は8月23日から27日までフランスのドーヴィルで開催される「エージェンシーフランセーズ・オーガスト・イヤリング」の展望をお届けしたい。

 残念なから日本へ入って来る子は数が少ないため、ファビラスラフイン、ルゼルなど、活躍馬は散発的にしか出ていないが、地元フランスではこの春も、ジャンプラ賞、パリ大賞典とG1を連覇したヴェスポーネ、アイルランド調教馬ながらフランス2000ギニーで2着となったキャッチャーインザライらが誕生。更にイタリアで共和国大統領賞2着となったタイガーテイル、そしてアジアで昨年12月の香港Cと今春のチャンピオン&チェイターCを連覇したプレシジョンなど、各国でコンスタントに活躍馬を出している。

 上場番号#18の牡馬は、この世代が初年度産駒となる英2000ギニー馬キングズベストの産駒。兄にカナダのG1アットマイルの勝馬リヴィエラ、祖母がG1サラマンドル賞勝馬マキシモーヴァ、母の兄弟に2頭のG1馬がいるという、超名門の出身である。

 上場番号#24は、世界が注目するドバイミレニアム産駒。この世代が最初で最後になるドバイミレニアム産駒は、そのほとんどが母親のお腹にいる段階でシェイク・モハメドが購買したと伝えられており、市場に出回るのはごくわずかと見られている。本馬は、母が牝馬ながらはG1ジャックルマロワ賞を制したミスサタミクサである。

 上場番号#26は、父がサドラーズウェルズ、母がキングマンボの全妹で、祖母がBCマイル連覇はじめG1・10勝のミエスクという牝馬。現役としての活躍もさることながら、将来の繁殖として無限の価値がある牝馬だ。

 上場番号#33の父ハイエストオナーの牝馬は、G1ヴェルメイユ賞2着、G1オペラ賞2着等の成績を残したレーヴドスカーの全妹。

 繁殖牝馬となって現在日本にいるレーヴドスカーが、ファンタスティックライトを配合されて今年出産した当歳馬が、先日のJRHAセレクトセールで6200万円という高値で購買されことは、皆様の御記憶にも新しいところだろう。

 上場番号#40は、これもこの世代が初年度産駒となる期待の新種牡馬ジャイアンツコウズウェイの牝馬。母レッドローゼスストーリーは、G1ロワイヤルオーク賞の勝馬である。

 ジャイアンツコウズウェイ産駒では、上場番号#60の牡馬にも注目したい。母トゥルーリーアドリームはカナダのG2・E.P.テイラーSの勝馬で、兄に今年のフランス2000ギニーになったキャッチャーインザライがいる。

 上場番号#45は、昨年のフランス2000ギニー勝馬ランドシーアの弟。兄は父デインヒルで、本馬は父ダンシリだから、ランドシーアの3/4弟にあたることになる。

 上場番号#46は、ドイツダービーとバーデン大賞を連覇したサムーム、ドイツオークスの勝馬で牝馬ながらバーデン大賞で2着となったサルヴァレギーナ兄妹の、全妹にあたる牝馬。

 上場番号#52の父アナバーの牝馬は、フランスにおける2歳牝馬女王決定戦マルセルブーサック賞の勝馬アモニータの全妹。父トランポリーノの半兄コックスオランジュも、5つの重賞を含めて10勝を挙げた活躍馬だった。

 同じアナバーの子では、上場番号#56の牡馬も注目。こちらは、今年のフランスダービー2着馬シュペールセレブルの半弟。今年フランスの3歳世代にはダラカニという怪物がいて、シュペールセレブルは日影の存在となってしまったが、普通の年ならトライアルから本番を楽勝でぶっこ抜いていたと言われているほど能力の高い馬だ。

 上場番号#61は、今年の5月13日に急逝し、この世代を含めて残りの産駒が3世代となったデインヒルの牡馬。母トワフィージは、アイルランドの2歳G1モイグレアスタッドSの勝馬である。

 デインヒルの産駒では、母が仏オークス2着馬ムースグラッセという上場番号#27の牡馬にも注目が集まっている。

 そのムースグラッセが姉にいるのが、上場番号#16の牡馬。父はこれも期待の新種牡馬ジャイアンツコウズウェイである。

 上場番号#75は、1999年の凱旋門賞をエルコンドルパサーとの死闘の末に制した他、欧州12ハロン路線の主要なタイトルを根こそぎ持って行ったモンジューの初年度産駒となる牝馬。母がアメリカのG1エイコーンSの勝馬アプトスターで、姪に昨年のJCに来日したイレジスティブルジュエルがいるという牝系である。

 80年代から90年代にかけて、ヨーロッパの一流種牡馬が根こそぎ北米に流出。種牡馬のロースターに関しては完全な北米優勢の時代が続いてきたが、ここへ来て情勢は変わり、アイルランドのクールモアを中心に欧州の種牡馬リストが著しいレベルアップを見せている。そういう意味でも、欧州のブラッドストック・マーケットには、これまで以上に注目する必要がありそうだ。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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