2013年08月24日(土) 12:00
夏の高校野球が終わると、季節の変わり目を感じて、ちょっとさびしくなります。
私は12、13日の2日間、甲子園に行って“熱い戦い”をナマ観戦してきました。そうしたら、その時に見た試合で勝ち上がったチームがベスト4を独占したんです。競馬で言えば4連複を当てちゃったようなもの(ちょっと違うか?)。高校野球は何度も見に行っていますが、こんなことは初めてです。
ナマで見たチームの中で一番印象に残っているのは花巻東。守っているときの内野手の動きに感心しました。走者が1人出ると、捕手から投手にボールを返す際、二塁手と遊撃手が投手の後ろに回って縦に並び、グラブを構えます。万が一、捕手からの返球が投手の頭を越えてしまったときのためのカバーリングです。それだけではありません。投手が一塁に牽制球を投げ、その球を一塁手が投手に返すときも、三塁手が投手の後ろに回ってグラブを構えるんです。
これらの動きは、野球の基本とされています。ところが、他のチームの中には、走者が三塁にいても二塁手、遊撃手がほとんど動かないところもありました。確かに、捕手から投手への返球が逸れて、その間に走者が進塁するなんて、何百試合に1回あるかないか。私は見た記憶がありません。でも、花巻東は、そんなめったにないミスにも備えて、言葉は悪いですが愚直なまでに確認作業をしていたのです。これが“危機管理”というものでしょう。いやぁ、勉強になりました。
スパイ疑惑やカット打法の是非で“お騒がせチーム”になってしまった花巻東ですが、あの内野手の徹底ぶりは感動モノです。ついでに言えば、そこまでやっているチームが、盗み見た相手のサインを誰にもわかるような形で自軍の打者に教える、なんていうことをしますかね? こんなことを書くと怒られそうですが、自軍の選手にしかわからない形で“情報”を伝えているチームがあったら、そのほうが問題だと思うんですけど。
さて、競馬の場合の“危機管理”となると、これはタイヘンです。よく、押さえ馬券と言いますが、それすら外れてしまうことはしゅっちゅうありますからね。万が一のときにはこうなるかも、と考え出したら、どんどん買い目が増えていって、収拾が付かなくなっちゃうでしょう。
そもそも賭け事というのは、いくつかある“起きそうな事”のうちのどれかを選んで賭けるわけで、選んだ以外のことが起きる“危機”に備えてはいられないんです。
なので、競馬ファンにとっての“危機管理”とは、マークカードを塗り間違えないこと、発券機から馬券やお釣りを取り忘れないこと、当たり馬券を捨てないこと、など、“うっかりミスの防止”になってくるんでしょうね。そうそう、一番大事な“危機管理”がありました。それは、どんなに外れても、生活に必要なお金まで無くさないこと、です!
バックナンバーを見る
このコラムをお気に入り登録する
お気に入り登録済み
お気に入りコラム登録完了
矢野吉彦「競馬最前線」をお気に入り登録しました。
戻る
※コラム公開をいち早くお知らせします。※マイページ、メール、プッシュに対応。
矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。