週刊サラブレッド・レーシング・ポスト

2003年08月11日(月) 19:47

 キーンランド・ジュライの休止によって、北米イヤリングセールのプレミア・マーケットとしては今季の幕開けとなった、ファシグティプトン・サラトガセール(8月5日〜7日、ニューヨーク州)は、総売り上げが前年比36.9%アップの4825万ドル、平均価格が前年比24.5%アップの313,357ドル、中間価格が前年比33.3%アップの24万ドル、バイバック・レートが21.4%(前年28.5%)と、全ての指標が上を向く好況に終わった。どの価格帯も万遍なく良く売れ、減速期にあると言われる米国の競馬関係者は、ひとまず胸を撫で降ろすことになった。

 好況を産んだ第一の原因は、品揃えが良かったこと。前述したように、キーンランド・ジュライが開催されなかったことで、これまでならジュライに廻っていたA級馬の何割かがこの市場に上場。血統の字面もさることながら、実馬の出来が良い馬が多いというのが、セールを前にした厩舎村における評判だった。これに加え、購買者も国内外から大物が集結。極めてヘルシーなマーケットが展開された。最高価格は、上場番号136番の父アンブライドルド、母ワードオヴウォーの牡馬についた、270万ドル。今年の3歳世代からもエンパイヤーメーカーという大物が出た父は、御存知のように2001年秋に死亡し、この世代が最後の産駒。希少価値も手伝って、激しい争奪戦となった。

 母が重賞入着馬で、兄にも重賞勝馬イードバイがいるという本馬。日本で走り1勝を挙げている3歳牝馬ベガスナイトは、本馬の2つ上の姉にあたる。

 購買したのは、2年前のこのセールで後の2歳チャンピオン・ヴィンディケーションを購買しているバドゥア・ステーブルのサティッシュ・サナン氏。ただし購買後、この馬の生産者であり市場における販売者であったストーンファームのアーサー・ハンコック氏とストーナーサイド・ステーブルのロバート・マクネア氏が、この馬の権利の1/4を買い戻したことを発表。結局3人の馬主の共同所有となることになった。

 さてそんな中、日本人によると見られる購買はわずか1頭。昨年の日本人購買は3頭と、例年それほど多数の日本人購買者がいるわけではないこの市場だが、市況がこれだけ上昇したとあっては、前年を更に下回る購買レベルになったのも致し方ないことかもしれない。

 一方、上場196頭中、唯1頭の日本産馬として注目されていた、上場番号112番の父フォーティナイナーの牡馬は、19万ドルでドッグウッド・ステーブルに購買された。母が阪神3歳牝馬S3着馬スーパードレスという本馬。アメリカでのデビューが楽しみである。

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合田直弘

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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