2013年09月07日(土) 12:00
突然ですが、今年1月末に引退した安藤勝己さんの現役時代の通算勝利数って、しっかり記憶にとどめていますか?
覚えてはいなくても、「そんなのJRAかNARのホームページで調べればすぐにわかるだろう」と思いますよね。ところが、それがそうじゃないんです。
まずNARのデータルーム。引退した騎手の成績も検索できるようになっていて、安藤勝騎手の場合、所属が笠松のものとJRAというものの、2つの記録が表示されます。で、笠松所属のほうには「生涯3299勝」と「中央通算189勝」、JRA所属のほうには「生涯54勝」とあります。
次にJRAのサイト。こちらも騎手データの中に引退騎手一覧という項目があり、そこで同騎手のページを開くと、「通算成績(JRA)1111勝」という記録だけが出てきます。さぁそれでは、安藤勝騎手の通算勝利数はいくつでしょう?
と言われても、双方のホームページにあるデータの読み方を心得ていないとわかりませんよね。ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、あらためてご説明させていただきます。
NARのほうの「生涯〇〇勝」は、地方競馬での通算成績。安藤勝騎手は笠松時代に3299勝、JRA移籍後に54勝を地方競馬で挙げている、ということになります。 一方、JRAのほうは、中央主催レースでの通算成績。当人が地方所属かJRA所属かは問いません。ですから、同騎手の1111勝には、NARに表示される笠松時代の「中央通算189勝」も含まれています。
よって、安藤勝騎手の通算成績は3299+54+1111=4464勝となるわけです。NARとJRAの成績欄に「但し書き」でもあればすぐにわかるんですけどね。ついでに言えば、ウィキペディアの同騎手の項目を見ても、この数字は出てきません(安藤勝己さんのtwitterの自己紹介には「通算4464勝」と書いてありますが)。
これは安藤勝己さんに限ったことではありません。例えば武豊騎手の通算勝利数となると、海外での成績も加えなければならないので、もっとタイヘンです。
先日、ヤンキースのイチロー選手が日米通算4000安打をマークしましたが、これもNPBとMLBの記録集には表示されない記録です。そうそう、楽天の田中将大投手が開幕20連勝を達成、昨年からの連勝記録を24まで伸ばしましたね。でも、同投手がこのまま今季を無敗で終わり、来年メジャーに移籍してさらに連勝を続けたとしても、イチロー選手の4000安打と同じように、その数字が双方の記録集に残ることはないわけです。
地方競馬とJRA、NPBとMLB、どっちのレベルがどうの、という話ではなく、本人がどういう数字を残したか、の問題です。それを、誰が見てもすぐにわかるように、残しておくことは必要だと思うのですが。
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矢野吉彦
テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。